新型コロナ感染後に「目」にも後遺症?——眼精疲労や目の痛みの正体と対策
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、呼吸器の病気として知られていますが、回復後にもさまざまな後遺症(いわゆる「ロングコロナ」)を残すことがあります。その影響は全身に及び、目にも症状が現れることが少なくありません。今回は、コロナ後に目に生じやすい代表的な症状やその原因、対策についてお話しします。
◎ ロングコロナと目の症状 ― COVID-19感染後に続く見逃されがちな眼の不調
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、一部の人において感染から回復した後も、長期間にわたるさまざまな症状を残すことが知られています。このような持続的な症状は「ロングコビッド(Long COVID)」や「ポストCOVID症候群」とも呼ばれ、厚生労働省でも研究が進められています。
ロングコロナに含まれる代表的な症状は、倦怠感、呼吸苦、記憶障害(いわゆるブレインフォグ)、関節痛、抑うつなど多岐にわたりますが、実は眼にも特徴的な後遺症がみられることがあります。
ロングコロナで報告されている眼症状
現在までに報告されているロングコロナの眼症状には、以下のようなものがあります:
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眼精疲労(アスセノピア)
長時間のピント合わせや画面の注視がつらくなる状態。特に頭痛やめまいとセットで訴えることが多く、自律神経系の関与が疑われています。 -
ドライアイ(乾性角結膜炎)
涙の質や量が減ることで目が乾き、異物感やかすみ、痛みなどが出現します。涙液の分泌に関与する自律神経機能が一過性に障害される可能性があります。 -
霧視・視力変動
視界が一時的にぼやける症状で、疲労時や午後~夕方に強くなる傾向があります。 -
羞明(まぶしさ)
光への過敏が強くなり、外出や画面作業に支障が出ることがあります。これは脳内の視覚情報処理に関与する部位の異常活動とも関連している可能性があります。 -
飛蚊症や閃光
一部の患者では、飛蚊症(黒い点や糸くずのようなものが視野に見える)や閃光(光の点滅)が現れるという報告もあり、後部硝子体の変化や網膜への影響が示唆されています。
眼科的アプローチの重要性
ロングコロナによる目の不調は、見逃されやすいものの、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。特にデジタル機器の使用が日常的になっている現代では、眼精疲労やドライアイの悪化に注意が必要です。
眼科医としては、こうした患者さんの訴えを丁寧に拾い、涙液量測定、角結膜染色、屈折・調節検査、視野検査などを通じて、視機能への影響を総合的に評価することが求められます。
また、視覚症状が脳神経系由来の可能性もあるため、必要に応じて神経眼科的な視野評価やMRIなどの精査も検討すべきです。
まとめ
ロングコロナに伴う眼の症状は、単なる疲れ目では済まされないケースもあります。「目がしんどい」「ぼやける」「まぶしい」といった訴えは、感染後の後遺症の一部かもしれません。新型コロナに罹患した既往のある患者で、こうした症状が長引く場合には、専門的な眼科診療が有効です。今後もさらなる研究と臨床報告が期待されます。
参考となる英文論文
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Muthukumar P, et al. “Ocular Manifestations in COVID-19: A Systematic Review and Meta-analysis.”
Ocular Immunology and Inflammation. 2021;29(6):1023–1029.
https://doi.org/10.1080/09273948.2021.1951918 -
Savastano MC, et al. “Retinal capillary involvement in early post-COVID-19 patients: a healthy controlled study.”
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology. 2021;259(9):2157–2165.
https://doi.org/10.1007/s00417-021-05138-5 -
Pereira LA, et al. “Persistent Ocular Symptoms After COVID-19: A Cross-Sectional Study.”
BMJ Open Ophthalmology. 2022;7:e001134.
https://doi.org/10.1136/bmjophth-2022-001134
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