全身病と眼

[No.3955] 新型コロナが休眠がん細胞を目覚めさせる…米国医師会雑誌で報告(関与記事)

新型コロナが休眠がん細胞を目覚めさせる…米国医師会雑誌で報告

公開日:2025/09/12 06:00 更新日:2025/09/12 06:00

出典:(新型コロナが休眠がん細胞を目覚めさせる…米国医師会雑誌で報告|日刊ゲンダイDIGITAL

日本にはがんと診断されて5年以上たっているがんサバイバーは数百万人いて、寛解状態の人も少なくない。喜ばしいことだが、がん再発のリスクがゼロになったわけではない。そんながんサバイバーが気になるのが、新型コロナ感染症を含めた呼吸器疾患だ。最新の研究では、新型コロナ感染が再発・転移の引き金になる可能性があるという。

 新型コロナ感染症(COVID-19)が再び勢いを増している。国立健康危機管理研究機構が2日に発表した感染症発生動向調査速報データ第34週(818日~24日)によると、全国およそ3000医療機関からの報告をもとに公表する「定点把握」の新型コロナ感染症の新規感染者総数は33275人。前週から1987人増加した。定点当たりの報告数も6.30から8.73に跳ね上がった。

 気になるのはその多くが、50歳以上であること。実際に第33週までのデータを年代別にみると50歳以上の報告者数は約半分を占めていて、昨年1230日以降に新型コロナで入院した89.8%は50歳以上であることがわかっている。

 依然として新型コロナは中高年にとって感染しやすく、重症化しやすい危険な疾病であるわけだが、最新研究ではCOVID-19は、50代で目立って増えるがん患者にとって、より警戒すべき存在であることがわかってきた。米国眼科学会会員で「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長が言う。

 

2025829日付の米国医師会雑誌医療ニュースに興味深い記事が掲載されました。新型コロナウイルス感染症インフルエンザなどの呼吸器ウイルス感染が、体内で眠っていた『休眠がん細胞』を再び活性化し、再発や転移を引き起こす可能性があるというのです」

■寛解から転移・再発のリスク

 記事は、乳がん寛解の妹が新型コロナ感染で再発・転移して短期間で亡くなったことをきっかけに、呼吸器疾患と休眠がん細胞について調べたロンドン大学医学部教授らの研究がもとになっている。この研究チームが総合科学雑誌「ネイチャー」に発表した直近の研究では、乳がん細胞を移植して休眠状態にしたマウスに亜致死量のインフルエンザAウイルスを感染させたところ、肺の中で休眠していたがん細胞が増殖を始め、2週間以内に転移性病変に拡大したという。新たにSARS-CoV-2でも同様の現象が起こるかを調べたところ、感染後28日でがん細胞が顕著に増加した。

 研究者らはさらに、新型コロナ流行中のがんサバイバーから収集されたデータを分析。新型コロナ検査陽性の患者は、陰性の患者に比べてがん関連死亡のリスクが2倍近くも高かった。さらに乳がんと診断された後に新型コロナ検査陽性になった患者は肺に転移する可能性が高かったという。

 新型コロナウイルスはどのようにして休眠がん細胞を目覚めさせるのか? この研究チームが可能性のひとつとして挙げたのが炎症に関わるサイトカイン「IL-6(インターロイキン-6)」だ。感染防御に重要な存在だが、同時にがん細胞増殖にも関わっている可能性があるという。

 新型コロナの流行期には、がん関連死が増加したことが指摘された。「新型コロナで医療機関の利用が制限され、発見や治療が遅れたため」との説明がなされたが、研究者はそれだけでは説明がつかない現象が多かったという。研究は休眠がん細胞が感染による炎症により目覚め、再発や転移を誘発する可能性を浮き彫りにした。しかし、研究者はこれはまだ確定的ではなく、他のウイルスやがん種でも同様のことが起きるかはこれからの課題だとしている。

「日本でも新型コロナ流行期には、診断から1年未満の血液がんや肺がんなど一部のがん患者さんは新型コロナ感染症にかかりやすく、重症化しやすいと報告されています。また、がん患者の入院・死亡リスクはそうでない人に比べて高かった。このことが根拠となり、がん患者さんへの新型コロナワクチンのブースター接種や早期治療の啓蒙につながったのです。新型コロナウイルスが休眠したがん細胞のスターターとなることが本当なら、新型コロナで亡くなった人の中には公表されたがん関連死以外にも未発見のがん細胞が感染により増殖したり、休眠していたがん細胞が再発・転移したケースも含まれていたかもしれません」(清澤院長)

 いずれにせよ、がん患者はもちろん、その予備群でもある年代は、新型コロナやインフルエンザなどの呼吸器疾患にかからないように努力することだ。

私の関連するブログ記事:

COVID-19ないしインフルエンザと「休眠がん細胞」―最新研究が示す新たなリスク

 

 

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