全身病と眼

[No.4286] ヒートショックの頻度・仕組み・症状・視覚との関連:

ヒートショックの頻度・仕組み・症状・視覚との関連


ヒートショックとは何か

冬の時期になると、入浴中やトイレで急に倒れてしまう高齢者のニュースを耳にします。これが一般に「ヒートショック」と呼ばれる現象です。医学的には正式な病名ではありませんが、急激な温度差によって血圧や脈拍が急変し、失神・不整脈・心筋梗塞・脳卒中などの重大な疾患を引き起こす状態を総称して指します。

■発生頻度は交通事故死の2倍以上

実際、厚生労働省や東京都福祉保健局などの統計によれば、日本では入浴中の急死が年間約1万9000人前後と推計されており、交通事故による死亡者(約3000〜4000人)の約5倍に達しています。

ただし「すべてがヒートショック」というわけではないものの、冬季の温度差が引き金となる突然死は非常に多いのは事実です。


どうして寒暖差が危険なのか

冬の脱衣所やトイレは、暖房されたリビングと比べて温度が大きく下がります。例えば、20℃のリビングから10℃以下の浴室へ移動すると、体は急激な変化に対応しようとします。

■血圧の急上昇

寒い場所に出ると、体は熱を逃がさないよう血管を収縮させます。そのため血圧が一気に上がることがあります。高血圧、動脈硬化を持つ人ではこれが脳梗塞や脳出血のきっかけになります。

■血圧の急降下

逆に、熱い湯に肩まで浸かると血管が急に広がり、血圧が急低下します。これにより失神して浴槽で溺れる事故が起こります。

■不整脈の誘発

温度差による自律神経の変動で心臓の電気リズムが乱れ、致死性不整脈が起こることもあります。


視覚とヒートショックの関係は?

ヒートショックは主に心臓・脳血管系の問題として語られますが、視覚にも一時的な症状が出ることがあります。

■(1)一過性黒内障(いっかせいこくないしょう)

急激な血圧変動により、網膜や視神経への血流が一時的に低下すると、

  • 一時的に視界が暗くなる

  • 視野が欠ける

  • 星が飛ぶように見える

    などの症状が現れることがあります。数十秒~数分で自然に回復する場合もありますが、脳血流が大きく落ちた場合は警告サインとなります。

■(2)めまいに伴う視覚の揺れ

血圧低下で立ち眩みが起きると、視界が白くかすむ・二重に見える・フラフラに感じるといった症状も生じます。

■(3)脳梗塞・脳出血による視野障害

より重症の場合、脳梗塞が起きれば半盲(左右の視野が欠ける)など、永続的な視覚障害につながることもあります。


予防のポイント

ヒートショックは適切な対策でかなり防ぐことができます。

■家の温度差を小さくする

  • 浴室・脱衣所に暖房器具を設置

  • 入浴前にシャワーで浴室を温める

  • トイレや廊下もできるだけ暖める

■湯温は41℃以下、入浴は10分以内

急激な血圧低下を防ぐため、熱すぎる湯に長く浸からないことが重要です。

■食後すぐや飲酒後の入浴は避ける

血圧が不安定な状態で入浴すると事故が増えます。

■高齢者は見守りを

一人暮らしの場合、家族が入浴の時間帯を把握しておく、声かけを行うなどが推奨されます。


まとめ

ヒートショックは冬季に多い“温度差ストレス”による急変で、日本で年間1万件以上の死亡につながる重大な問題です。主に心臓や脳血管が影響を受けますが、血圧変動により一時的な視覚障害や、重篤例では永続的な視野欠損を起こすこともあります。

家の中の温度差を減らすことが最も大切で、特に浴室と脱衣所の暖房は効果的です。冬の入浴は安全対策を取りながら、無理なく行うことが命を守る鍵になります。

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