肥満治療に新しい選択肢 ― 飲み薬のウェゴビーをどう考えるか
肥満治療は、ここ数年で大きく様変わりしています。その象徴が、食欲を抑える作用をもつGLP-1受容体作動薬です。これまで減量目的では週1回の注射薬が中心でしたが、2026年初頭、米国で**初めて減量を目的とした経口GLP-1薬(飲み薬)**が承認されました。
承認したのはFDAで、製造元はノボ・ノルディスクです。薬の名前は「ウェゴビー錠」で、有効成分は注射薬と同じセマグルチドです。もともと糖尿病治療薬として使われてきた成分ですが、満腹感を強め、食事量を自然に減らす作用があることから、肥満治療にも応用されてきました。臨床試験では、肥満または過体重の人が約1年服用したところ、平均で体重の約14%が減少しました。これは、従来の週1回注射のウェゴビーとほぼ同等の効果とされています。「同じ薬で、体に入る経路が違うだけ」という専門家の見解もあります。
一方で、飲み薬には注意点もあります。注射は週1回決まった日に打つだけですが、錠剤は服用方法が非常に厳格です。朝起きてすぐ、空腹の状態で少量の水と一緒に服用し、その後30分間は飲食や他の薬を避けなければなりません。これは、腸から吸収されにくい薬であるためで、ルールを守らないと十分な効果が得られません。副作用は吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状が中心で、注射薬と似ていますが、経口薬の方が症状が出やすい可能性が指摘されています。そのため、少量から始めて段階的に増量することが重要です。費用面では、錠剤は製造しやすく供給が安定しやすい利点があります。米国では、保険の条件次第で自己負担が比較的抑えられる見込みです。一方、注射型GLP-1薬は保険適用が制限される動きもあり、今後は「飲み薬しか選べない」という状況が増える可能性もあります。どちらが良いかは、生活リズムや性格によって異なります。毎朝の服薬ルールを守れる人には錠剤が向いていますが、現実には「週1回で済む注射の方が続けやすい」人も少なくありません。
さらに今後、イーライリリーが、食事制限なしで服用できる新しい経口GLP-1薬の開発を進めており、肥満治療はますます選択肢が広がっていくと考えられます。
眼科医の立場から見た注意点(視機能・精神面・依存)
眼科医として注目したいのは、急激な体重変化や食事量の変化が、全身だけでなく眼にも影響を与える可能性です。栄養摂取が極端に減ると、ビタミン不足やドライアイの悪化、視機能の不調を訴える方が出てくることがあります。
また、GLP-1薬は脳の食欲中枢にも作用するため、「食への関心が極端に低下する」「楽しみが減ったように感じる」といった精神面の変化を訴える人もいます。これは必ずしも病的ではありませんが、気分の落ち込みや不安が強くなる場合には注意が必要です。
さらに最近は、GLP-1治療が依存症や衝動行動に影響する可能性も議論されています。食行動がコントロールされる一方で、アルコールや別の行動に置き換わるケースがないか、医療者側が丁寧に見守る姿勢が重要です。
出典
Schweitzer K. What to Know About Wegovy Pills for Obesity.
JAMA Medical News. Online published January 16, 2026.
doi:10.1001/jama.2026.0035
清澤のコメント
GLP-1治療は、肥満を「意志の弱さ」ではなく医学的に管理すべき状態として扱う流れを決定づけました。一方で、飲み薬であっても決して「気軽なダイエット薬」ではありません。体重だけでなく、目や心の変化にも目を向けながら、医師と相談して上手に使うことが大切だと感じています。



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