新しい出生前診断(NIPT)が進化します
― 全ての染色体を調べる臨床研究とは何か ―
2026年2月、東京慈恵会医科大学など全国11の認証医療機関で、「新出生前診断(NIPT)」をさらに進化させた臨床研究が始まる予定だと報じられました。これは、妊婦さんの血液を使って、胎児のすべての染色体の異常を調べられるかどうかを検証する大規模な研究です。
背景:なぜ新しい検査が必要なの?
これまで日本で行われてきたNIPTは、主に
- 21トリソミー(ダウン症)
- 18トリソミー
- 13トリソミー
という3種類の染色体異常に限って調べる検査でした。
一方、海外ではより多くの染色体を対象にした検査も行われていますが、日本では精度や説明体制が十分でない無認証施設での検査が横行し、妊婦さんが混乱したり、不安を強めたりする問題が指摘されてきました。
こうした背景から、「きちんとした体制のもとで、全染色体検査の正確さと限界を検証しよう」というのが、今回の臨床研究の目的です。
目的:何を明らかにする研究?
この研究の目的は主に3つあります。
- 血液検査だけで、全染色体の異常をどこまで正確に見つけられるか
- 誤った結果(偽陽性・偽陰性)がどの程度あるか
- 妊婦さんへの遺伝カウンセリング体制をどう整えるべきか
特に重要なのは、「陽性=確定診断ではない」という点を、妊婦さんに十分理解してもらえる仕組みを作ることです。
方法:どんな人が、どうやって受けるの?
対象となるのは、
- 妊娠10週以降37週未満
- 18歳以上
- 超音波検査で胎児の特徴から病気が疑われた場合
- 過去に染色体疾患のあるお子さんを出産した経験がある場合
などの条件を満たす妊婦さんです。
妊婦さんの血液を採取するだけで、そこに含まれる胎児由来のDNAを解析します。
結果で異常が疑われた場合には、羊水検査などの確定検査を追加で行います。
結果:何が期待されているの?
この研究は2030年まで続き、約2,000人の妊婦さんが参加予定です。
もし、血液検査だけで全染色体の異常を高い精度で評価できることが確認されれば、
- 妊婦さんの身体的・精神的負担が大きい羊水検査を
必要な場合に絞れる - より多くの情報を、妊娠の早い時期に安全に得られる
といったメリットが期待されます。
大切な点:検査は「知るため」であり「決めるため」
出生前診断は、結果によって非常に重い決断を迫られることがあります。
そのため今回の研究では、産婦人科医だけでなく、小児科医や遺伝専門医が関わり、**丁寧な説明と相談(遺伝カウンセリング)**を重視しています。
他院で妊婦健診を受けていても検査は可能?
はい、可能です。
現在通っている産婦人科から**紹介状(診療情報提供書)**を書いてもらえれば、
出産予定の医療機関とは別の、認証施設でこの検査を受けることができます。
検査結果は紹介元の医療機関とも共有され、妊娠・出産に向けた継続的なケアに活かされます。
眼科医としてのひと言
眼科でも、緑内障や網膜疾患の検査で「スクリーニング検査と確定診断は別」という考え方を大切にしています。
出生前診断も同じで、正しい情報を、正しい体制で受け取ることが何より重要です。
今回の取り組みが、妊婦さんとご家族が納得して選択できる医療につながることを期待しています。
追記:
21トリソミー(ダウン症)では、斜視や遠視が多く、弱視を伴うことがあります。眼の特徴として、内眼角贅皮(目頭の皮膚のひだ)やつり上がった眼裂が見られることがあります。また、白内障や角膜混濁、網膜の発達異常がみられることもあり、乳幼児期からの定期的な眼科診察が大切です。
18トリソミーでは重い全身合併症を伴うことが多く、眼球が小さい(小眼球)、眼裂が狭い、網膜や視神経の形成異常などが報告されています。視機能は重度に障害されることが多いとされています。
13トリソミーでは、眼の形成異常がより強く、片眼または両眼の欠損、重度の小眼球、網膜や脈絡膜の欠損などがみられることがあります。視覚の獲得は困難な場合が多いとされています。



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