光学的に改善されたミトコンドリア機能は、老化した人間の視機能を回復します：論文紹介
清澤のコメント：少し前の論文ですが、赤い色のダイオードを一定時間見させることで、加齢に伴う網膜の劣化による色覚変化を軽減できるという事を実証しようとした論文です。赤い光を見させることで近視進行を抑制しようという別の研究の話も聞いた気がします。（⇒原著リンク）
光学的に改善されたミトコンドリア機能は、老化した人間の視機能を回復します
ハープリート・シンマーほか Optically Improved Mitochondrial Function Redeems Aged Human Visual Decline
老年学ジャーナル: シリーズ A、第 75 巻、第 9 号、2020 年 9 月、ページ e49–e52、
https://doi.org/10.1093/gerona/glaa155
公開日:2020年6月29日
抄録
人間の年齢層は高齢者へと移行しており、身体的な衰えに苦しむ人の割合が大きくなっています。ミトコンドリアは、アデノシン三リン酸（ATP）の形で細胞機能に提供するエネルギーが年齢とともに減少するため、老化の速度に影響を与えます。ミトコンドリア密度は、光受容体、特に高いエネルギー要求を持ち、色覚を媒介する錐体で最も高くなります。したがって、網膜は他の臓器よりも早く老化し、生涯にわたってATPが70％減少し、光受容体機能が大幅に低下します。ミトコンドリアは、そのパフォーマンスに影響を与える特定の光吸収特性を持っています。650 ～ > 1,000 nm にわたる長波長により、ミトコンドリア複合体の活性、膜電位、ATP 産生が向上します。ここでは、670 nm の光を使用して光受容体の性能を向上させ、28 ～ 72 歳の人々を対象にこれを心理物理学的に測定します。桿体と錐体の性能は、約 40 歳を過ぎると大幅に低下します。670 nmの光は若い人には影響を与えませんでしたが、約40歳以上の人では、ミトコンドリアの脆弱性を示すことが知られている青色の視軸（トリタン）の色のコントラスト感度に大幅な改善が得られました。赤い視軸（プロタン）は改善されましたが、大幅ではありませんでした。杆体閾値も 40 年以上で大幅に改善しました。特定の波長を使用してミトコンドリアのパフォーマンスを高めることは、この代謝的に要求の高い組織の老化プロセスを緩和する上で重要です。
老化,色覚,光生体調節
トピック：エージング、アデノシン三リン酸、ミトコンドリア、細胞機能、色、網膜円錐、コントラスト感度、膜電位、光受容体、網膜、色覚、波長、感情的な脆弱性、エネルギー吸収
人間の老化は大きな社会問題であり、網膜は代謝率が高いこともあり、他の臓器よりも早く老化します ( 1、2 )。ここでは、70歳までに中心杆体の30%が死に、錐体は機能が低下します( 3-5 )。老化のペースは、細胞機能を促進するためにアデノシン三リン酸 (ATP) を生成するミトコンドリアによって調節される細胞代謝によって部分的に制御されます。ミトコンドリアが減少すると、膜電位と ATP 合成が低下します。これが起こると、ミトコンドリアは活性酸素種の産生を増加させ、それが全身性炎症を増加させ、細胞死の信号を送る可能性があります ( 6 )。
ミトコンドリア密度は光受容体で最も大きく、その減少は網膜機能の低下や加齢に伴う疾患の発症に関連している可能性があります ( 7 )。しかし、ミトコンドリアは人間の視覚の限界を超える波長を含む長波長を吸収するため、老化したミトコンドリアの性能は光学的に改善することができ、これはしばしば光生体調節と呼ばれます。光によるミトコンドリア機能の改善は、ミトコンドリア膜電位および ATP 産生の増加と関連しています ( 8、9 )。さらに、長波長の光は、加齢やミトコンドリア損傷により低下した網膜および全身の中枢神経系の機能を改善することができます ( 10-12 )。フォトバイオモジュレーションが高齢マウスの網膜機能を改善できることも示されています ( 13 )。しかし、マウスの網膜には中心部の錐体密度のピークがなく、霊長類とは非常に異なる老化をします( 14 )。さらに、げっ歯類は一般に光を避け、視覚を主要な感覚様式として使用しません。
ここでは、より長い波長を使用して、この治療法が高齢者の網膜機能を改善できるかどうかを判断します。具体的には、670nmに2週間比較的短時間毎日曝露すると、約40歳以上の網膜機能、特に青色に見えるトリタン視軸を媒介する錐体機能が大幅に改善する可能性があるという仮説を検証します。
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原著：Optically Improved Mitochondrial Function Redeems Aged Human Visual Decline Harpreet Shinhmar, MSc,1 Manjot Grewal, BSc,1 Sobha Sivaprasad, MBBS, PhD,1 Chris Hogg,1 Victor Chong, MBBS, PhD,2 Magella Neveu, PhD,1 and Glen Jeffery, DPhil1, * 1 Institute of Ophthalmology, University College London, UK. 2 Boehringer Ingelheim, Germany.
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