強度近視における黄斑部網膜分離症
強度近視で受診される患者さんの中には、黄斑部に網膜分離症を呈する方がしばしば見られます。ここでは、その原因、症状、そして眼底写真や3次元網膜画像解析装置(OCT)で確認できる所見について説明します。高度近視では、この網膜変化に加えて、緑内障が併発することも少なくありません。(図 Development of Macular Hole and Macular Retinoschisis in Eyes with Myopic Choroidal Neovascularization – American Journal of Ophthalmology (ajo.com))
原因
高度近視における黄斑部網膜分離症は、主に眼球の伸展によって引き起こされる網膜の構造変化によるものです。高度近視では眼軸長が著しく伸び、これにより網膜が引き伸ばされて薄くなります。この伸展によって、特に黄斑部で網膜の層内に分離が生じ、黄斑部網膜分離症が発生します。後部ぶどう腫、硝子体牽引、および異常な硝子体網膜インターフェースなどもこの状態の発生に寄与します。
症状
黄斑部網膜分離症を持つ患者さんは、次のような症状を経験することがあります:
- 中心視力の徐々に進行する低下
- 変視症(画像の歪みの自覚)
- 中心視野における暗点(視力が失われる領域や盲点が視野検査で検出される)
- 網膜剥離などの合併症が発生した場合、視力低下が顕著になります。
眼底写真での所見
黄斑部網膜分離症は、眼底写真では常に明確に見えるわけではありませんが、以下の特徴が認められる場合があります:
- 中心窩の陥凹が不明瞭または消失していることがある
- 黄斑部に軽い光沢や異常反射が見られることがある
- 網膜剥離が合併している場合、その剥離が視認できることがあります。
光干渉断層計(OCT)での所見
OCTは黄斑部網膜分離症の診断に非常に重要であり、網膜の層構造を詳細に映し出します。典型的な所見には次のものが含まれます:
- 網膜層の分離: 外網状層と内顆粒層の間、または他の網膜層内での分離として観察されます。
- 分離腔: これは網膜内に見られる低反射性の空間で、分離された網膜層間に液体が蓄積していることを示します。
- 内外網膜の関与: 一部のケースでは、分離が複数の層に広がり、内外網膜の両方が関与します。
- 網膜の肥厚: 液体の蓄積により、黄斑部が肥厚して見えることがあります。
- 硝子体牽引: 網膜前膜や硝子体黄斑牽引として観察され、網膜分離に寄与している可能性があります。
治療
無症状または症状が軽い場合には、経過観察が主に行われます。手術よりも安全であることが考えられるためです。しかし、視力が悪化したり黄斑部剥離が発生したりした場合には、硝子体手術(硝子体切除術)などの外科的介入が考慮されることがあります。また、緑内障に関連する視野変化が見られる場合には、緑内障に対する点眼治療なども考慮されるべきです。
強度近視における黄斑部網膜分離症のこれらの側面を理解することは、正確な診断と治療にとって重要であり、特に患者さんに潜在的なリスクや治療オプションを説明する際に役立ちます。この病態をもっと慣れているのはこの記事の最初に引用した図を発表している東京医科歯科大学眼科でしょう。
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