近視・強度近視

[No.2933] 強度近視眼における緑内障診療のポイント:(文献紹介)

強度近視眼における緑内障診療のポイント:(西垣誠侍、美樹篤也)という手引きが日本の眼科9月号に出ています。確かに近視眼には緑内障様の視野変化が多く、また視神経乳頭周囲には色素上皮の萎縮が見られます。ベータとかγとかややこしい名前がついていますが、患者さんとしては視野変化を起こす眼底変化(網脈絡膜萎縮)が強度近視では起きやすいという事だけ覚えておいてください。

   ーーーー記事の要点ーーー

強度近視眼における緑内障の診療には、近視そのものが視野障害を引き起こすため、緑内障と区別するのが難しいことがあります。特に強度近視の患者では、視神経乳頭の傾斜や、視神経乳頭周囲の脈絡網膜萎縮(PPA)があり、これが緑内障と似た視神経の変化や視野障害を引き起こすことがあります。このため、診断は非常に難しく、注意が必要です。

PPAは網膜色素上皮(RPE)の変化に基づき、2つのゾーンに分類されます。αゾーンはRPEの不整を示す領域であり、βゾーンはRPEが消失して脈絡膜の血管や強膜が透けて見える領域です。さらに、βゾーンは緑内障のリスクを増大させるとされています。また、OCTを用いることでβゾーンがさらに詳しく分けられ、γゾーンが定義されています。γゾーンは、RPEとBruch膜の両方が欠損している領域を指し、βゾーンと異なり、緑内障リスクの増加とは直接関係がないとされています。これらのゾーンの違いを把握することで、近視性の視神経変化と緑内障の鑑別がより正確に行えます。

また、強度近視患者の約11%にみられる**脈絡膜内空洞(ICC:intrachoroidal cavitation)**という病変も注意が必要です。脈絡膜内空洞(ICC)はOCTで脈絡膜内の空洞として観察され、これが視神経の損傷を引き起こし、緑内障と似た視野障害を生じさせます。

診療では、PPAやICCなどの特徴を見極め、経過観察を通じて、視野や視神経の変化を慎重に分析し、近視性か緑内障性かを判断していく必要があります。

追記:

Beta and Gamma Peripapillary Atrophy in Myopic Eyes With and Without Glaucoma

1.ベータPPAおよびガンマPPA領域の測定例。(A)視神経乳頭のカラー写真(B)(A)と同じ画像で、視神経乳頭の縁(水色の点)、ブルッフの膜開口部(赤い点)、および乳頭周囲(PPA)の縁(濃い青の点)。影付きの領域は、ベータPPA(青)とガンマPPA(赤)を表します。(C)光干渉断層撮影画像([B]の緑の破線に沿って)は、ディスクマージン(水色の垂直線)BMO(赤い点)PPAマージン(濃い青の垂直線)の対応する位置を示しています。青い横矢印はベータPPAを示し、赤い横矢印はガンマPPAを示します。

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