小児・思春期の近視進行をどう抑えるか
― オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼を比較した最新研究 ―
#これは近視進行予防を論じた最新の代表的研究の説明です。このほかに一日2時間以上の戸外活動も推奨されています。
背景
近年、子どもの近視は世界的に増加しており、日本でも学童期から思春期にかけて近視が進むお子さんが少なくありません。近視が強くなると、将来、緑内障や網膜剥離、近視性黄斑症などの眼疾患のリスクが高まることが分かっています。そのため、単に眼鏡やコンタクトレンズで「見えるようにする」だけでなく、近視の進行そのものを抑える治療(近視制御)が重要になっています。
現在、近視制御として広く用いられている方法には、夜間に特殊なコンタクトレンズを装用するオルソケラトロジーと、低濃度アトロピン点眼がありますが、特に成長後半の子どもや思春期において、どの治療がより適しているかは明確ではありませんでした。
目的
本研究の目的は、8~15歳の比較的年齢の高い小児・思春期の近視患者を対象に、
① オルソケラトロジー
② 0.01%アトロピン点眼
③ 0.04%アトロピン点眼
の3つの治療法について、2年間にわたる近視進行抑制効果と安全性を直接比較することです。
方法
この研究は、中国・上海の2施設で行われた多施設無作為化臨床試験です。
対象は、近視の度数が−1.0~−4.0ジオプターの8~15歳の子ども209人で、治療法ごとに3群に無作為に分けられました。
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毎日0.01%アトロピンを点眼する群
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毎日0.04%アトロピンを点眼する群
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夜間にオルソケラトロジーを装用する群
として2年間治療と経過観察が行われました。
近視進行の評価には、眼鏡の度数変化だけでなく、**眼球の前後の長さ(眼軸長)**の伸びを主な指標として用いています。
結果
2年間の追跡を完了した子どもを解析したところ、
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0.04%アトロピン群は、0.01%アトロピン群よりも眼軸長の伸びが有意に少なく、最も強い近視抑制効果を示しました。
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0.01%アトロピンとオルソケラトロジーの効果はほぼ同等で、臨床的に意味のある差は小さいと考えられました。
安全性については、
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0.04%アトロピンでは**まぶしさ(光恐怖)**を訴えるお子さんがやや多く、
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オルソケラトロジーでは軽度の角膜表面の傷が一定数に認められました。
ただし、いずれも重篤な副作用はなく、3つの治療法はいずれも概ね安全に実施可能と判断されています。また、年齢が高いほど近視進行が緩やかである傾向も確認されました。
結論
この研究から、8~15歳の近視を有する小児・思春期では、0.04%アトロピン点眼が最も高い近視進行抑制効果を示すことが分かりました。一方で、副作用としてのまぶしさには注意が必要です。
0.01%アトロピンは、効果と安全性のバランスが良く、オルソケラトロジーと同程度の近視抑制効果が期待できます。
近視制御治療は一律に決めるものではなく、年齢、近視の進行速度、生活スタイル、治療への適応性を考慮した個別対応が重要であり、今後はさらに長期的な経過観察が望まれます。
清澤コメント(保護者の方へ)
大正は8~15歳とされています。近視進行予防の治療は、お子さん一人ひとりで最適な選択が異なります。目安としては次のように考えてください。
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近視の進みが速く、効果を重視したい場合
→ 0.04%アトロピン(まぶしさなど副作用の説明が必要):(現在日本では入手不可能) -
効果と安全性のバランス、点眼治療の手軽さを重視する場合
→ 0.01%アトロピン (現在の日本国内では0.025%が標準) -
点眼が苦手、日中は眼鏡なしで過ごしたい場合
→ オルソケラトロジー(夜間装用と定期検査が前提)(これはアトロピンとの併用も可能とされている)
いずれの治療でも、定期的な視力・眼軸長のチェックを行い、成長に合わせて治療を見直すことが大切です。
出典
Xu H, Chen M, Ye L, et al.
Orthokeratology vs 0.04% and 0.01% Atropine for Myopia Control.
JAMA Ophthalmology. 2025;143(9):731–738.
doi:10.1001/jamaophthalmol.2025.2321
ClinicalTrials.gov Identifier: NCT05357326



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