清澤のコメント:有水晶体眼内レンズ(ICL)が注目を集めています。今回は、日本の眼科12月号掲載の「有水晶体眼内レンズ」(神谷和孝先生・北里大医療衛星学部)の記事から、章立てを維持したまま、平易に要旨をまとめてみました。私はこの手術を行ってはおらず、まだ十分に慎重な適用の検討が医師患者共に必要ですが、白内障手術を行う施設では基本的には可能のように聞こえます。対象眼が従来の強度近視眼から乱視を含む中等度近視にまで広がったことが注目されます。この手術は現況ではレーシックと同様に国民健康保険の適用外です。
要約
レーシック手術の需要が減少する中、後房型有水晶体眼内レンズ(ICL)が主流となっています。最新のホールICLでは、術後の白内障や眼圧上昇のリスクが軽減され、適応範囲も拡大しています。手術技術は白内障手術に近く、多くの眼科医が実施可能です。安全性や有効性も高く、今後さらに普及が予想されます。
Ⅰ. 手術適応
- 従来:6D以上の強度近視が対象。
- 現在:3D以上の中等度近視や軽度の円錐角膜にも適応が広がり、推奨年齢は21~45歳。
- 適応外:房深度が浅い、角膜内皮細胞が少ない、進行性白内障などがある症例。
Ⅱ. レンズの選択
- 術前検査で度数・大きさを個別に決定。
- 適切なサイズ選択が重要(過大→眼圧上昇、過小→白内障リスク)。
- 近年のOCT技術により、サイズミスが減少。
Ⅲ. 術前・術中の留意点
- レンズ挿入時の安定性が重要。
- 点眼麻酔や低分子粘弾性物質を使用。
- レンズ挿入時の適切な操作方法を徹底。
- 角膜乱視軽減のための上方切開は増加傾向にあるが、操作が難しい場合もある。
Ⅳ. 術後の経過観察
- 定期フォローアップが必要:術当日、翌日、1週間、1か月、3か月、6か月、1年後、その後は年1回。
- 術後の眼圧上昇に注意し、必要に応じて処置。
- Vault量(レンズと水晶体の距離)の計測など、前眼部OCTを活用。
Ⅴ. 白内障手術における留意点
- ICL装着眼の白内障手術では、レンズ摘出が比較的容易。
- 通常の白内障手術手技と同様に行えるが、前房安定化に配慮。
- IOL(眼内レンズ)の度数計算は、特別な補正が不要。
おわりに
ICLの普及はさらに進むと予想されますが、手術の安全性を最優先に考えることが重要です。科学的根拠に基づき、眼鏡やコンタクトレンズに問題のある患者への一つの選択肢として提供されるべきです。着実な普及を目指すことが求められます。
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