◎Ⅰ) 小中学生のスマホ長時間使用に伴う急性内斜視について、治療法については、以下のような予防策や治療方法があります1:(短く)
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予防策:
- スマホやゲームの使用時間を制限する。
- スマホを見るときは、なるべく50cm以上離して見る。
- 30分につき5分以上の休憩を取る。
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治療方法:
- 複視を軽減するために、上記の予防法を行う、
- それで改善しないならば、プリズム眼鏡を処方しこれを装着させる。
- 第一選択ではないが、眼球の周りの筋肉にボツリヌス毒素を注射するなどの治療法も提案されている。2。
ただし、急性内斜視については、スマホやゲームとの因果関係はまだ確立されているとは言い切れないため、詳細な治療法については眼科医と相談して治療を試みるのがよい。
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Ⅱ) 詳しく:最近、ゲームやスマホに関連した目の相談が増えている。 スマホの普及に伴い、ある程度の年齢になってから起きる「 スマホ内斜視 」の相談が増えている。 正式には「 急性内斜視 」と言うが、簡単に言うと 目が内側に寄ってしまうこと。
上記の記載とも重複するが、この急性内斜視に関しては浜松医科大学の佐藤美保教授が詳しい。学会でもそのような症例を集めて調査が行われている。リンク⇒日本財団ジャーナルに佐藤先生の発言が採録されている。それをここで抄出採録してみる。:
タブレットの普及により大人の斜視が急増
――近年増えているというスマホ内斜視について:
スマートフォンなどのデジタル機器の過剰使用による急性の斜視が増え、「スマホ内斜視」という言葉が生まれた。一方で、実際にスマホ内斜視がなぜ起こるのかということははっきりと解明されていない。
もともと両目でものを見るのが苦手であったり、近視だったりするひとがスマホを長時間見ることで斜視になってしまったというパターンが多い。直接的な原因ではなく「スマホがきっかけで発症してしまう」と、考えた方がいいかもしれない。
――スマホ内斜視は突然発症するものか?
急性とはいっても、突発性のことは少なく、徐々に症状が現れるという方が多い。スマホを長時間見たあとに「目の調子が悪い」と思っていたけれども、休憩すると治っていて。半年や1年かけて、少しずつ治らなくなっていき、複視が治らなくなってしまったり、他人から眼の位置がおかしいことを指摘されるようになったという話もある。
少しずつ悪化していくので、最初に違和感を覚えたとき、例えば複視、混乱視のような症状が表れたとき、すぐに対処することが大切。
――その対処法は。
① 睡眠を取るなど、目の負担をなるべく軽減する生活習慣が大切です。現代人は近くばかりを見て生活をしているから、② スマホを見る際は30分に1回は窓の外を見るなど、休憩を挟むことで負担は軽減できる。
③ 予防としてはタブレットを使用する際はなるべく大きいものにして、距離を離して見られるようにすることも重要。親が注意して見てほしい。
仕事や娯楽などついつい夢中になって長時間画面を見続けることもあるかと思うが、普段から意識して休憩時間を取る習慣をつけることが大切。とくに近視のかたが、眼鏡やコンタクトレンズを外し、スマホを顔に近づけて見るのは内斜視の原因となる可能性があるので、やめてほしい。
――「斜視は誰でもなる可能性がある」ということの認知度はあまり高くない。
斜視は日本の全人口の2パーセントほどの確率でしか発症しない。患者さんも「眼科医に診てもらう」という意識がそこまで高くないことも多い。斜視を専門にしている眼科自体が少ない。
――斜視の方は具体的にどのようなことに悩んでいるか?
よく聞くのは見た目の問題。社会生活をする上でネガティブになってしまっている方が多い。斜視に関しては手術で治すことも可能です。
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Ⅲ、原著:世界の代表的な論文:
スマートフォンの過度の使用に関連する急性後天性併発内斜視
2016年4月BMC眼科 16(1)
DOI: 10.1186/s12886-016-0213-5
Hyo Seok Leeほか。
抄録:
背景:青年期のスマートフォンの過剰使用に関連する急性後天性併発内斜視 (AACE) の臨床的特徴と転帰について説明する。 方法 過剰なスマートフォン使用歴のある AACE 患者 12 人の医療記録を遡及的に検討し、スマートフォンの使用期間、偏角、屈折異常、立体視、および治療選択肢を分析した。
結果: すべての患者は、遠方固視で 15 ~ 45 プリズムジオプター (PD; 平均: 27.75 ± 11.47 PD) の範囲の輻輳内斜視および付随内斜視を示しました。 偏角は遠方注視と近方注視でほぼ同等でした。 すべての患者は、数か月間(最低 4 か月間)にわたって 1 日 4 時間以上スマートフォンを使用しました。 近視性屈折異常は 8 人の患者で検出され(平均:-3.84 ± 1.68 ジオプトリ (D))、残りの 4 人の患者は軽度の遠視性屈折異常を示しました(平均: +0.84 ± 0.53 D)。 スマートフォンの使用を控え、かなりの残存外偏差を有する3人の患者に両側内側直筋後退を施行した. 術後の検査では、これらの患者において良好な立体視を伴う正斜視が示された.
結論: 過度のスマートフォンの使用は、青少年のAACE発達に影響を与える可能性があります. スマートフォンの使用を控えることは、程度を軽減する可能性があります これらの患者の眼位は改善されており、残存逸脱は外科的矯正でうまく管理できます。
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