小児の眼科疾患

[No.3407] 乳児虐待事件の診断医が直面する主な問題点についての論文が発表されました

乳児虐待事件の診断医が直面する主な問題点についての論文が発表されました
タイトル:「小児脳神経外科 虐待による小児頭部外傷に関する諸問題」
著者:君和田友美(島根大学医学部附属病院小児脳神経センター)

眼科医清澤のコメント
乳児虐待に関する裁判で、被告側で無罪を求める眼科意見書を提出している立場として、この論文を抄出してみました。中村1型という低位転落や転倒などで起きるくも膜下出血への言及がないという意見もありましたが、私は、AHT(虐待による頭部外傷)の診断は簡単ではなく、「原因はわからない」というのも正しい答だという論文の内容に異議はありません。非常に示唆に富む内容の論文でした。

論文の要旨
乳幼児の頭蓋内出血は非特異的な症状が多く、虐待による頭部外傷(AHT)の判断が非常に難しい問題です。事故や基礎疾患と区別するためには、医師による全身骨X線や徹底した評価が求められます。さらに、脳損傷には乳児期特有のものがあり、正確な診断が重要です。誤った判断は司法や家庭に深刻な影響を及ぼす可能性があり、慎重な医学的対応が必要です。また、関係機関による虐待防止体制が不十分であることも課題として挙げられています。

乳児虐待性頭部外傷診断の歴史
1946年に米国の放射線科医Caffeyが初めて報告し、その後、虐待による損傷が医学的に注目されました。1962年には「虐待児症候群」が提唱され、揺さぶりによる脳損傷が1970年代に注目されましたが、最近では医学鑑定の精度向上が重要視されています。

まとめ
虐待判断には明確な診断基準がなく、誤判が深刻な影響を及ぼす可能性があります。医師の鑑定において「わからない」と述べることは職責の放棄ではなく、慎重な対応が求められる課題です。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。