清澤のコメント:昨日の記事で小児のドライアイと近視に関連があるという話題がありました。本日のMedical tribuneにも踏み込んだ記事がありましたので、抄出採録しておきます。小児のドライアイと近視進行に関連があるというのには、既に一定のコンセンサスが得られているようです。
ーーー抄出採録ーーーー
近視対策は就学前から必要,疫学研究の結果を報告
2022年10月20日 16:58
近年、世界的に近視人口が増加しており、2050年には全世界人口の49.8%が近視になり、強度近視人口は9.8%(9億3,800万人)と予測されている(Ophthalmology 2016; 123: 1036-1042)。慶應義塾大学眼科学教室専任講師の鳥居秀成氏は、近視疫学研究の結果を第61回日本白内障学会/第48回水晶体研究会(8月27〜28日)で報告。「小学校低学年児でも近視が増えており、就学前からの対策が必要」と述べた。
小学校1年生で近視が63%超
東京都の小中学生計約1,500例を対象に近視検診を開始した。その結果、児童・生徒の近視有病率〔屈折値(SE)−0.5D以下の割合〕は、小学生で76.5%、中学生で94.4%だった。強度近視有病率(同−6.0D以下の割合)は小学生で4.0%、中学生で11.3%だった(JAMA Ophthalmol 2019; 137: 1233-1239)。小学校1校(689例)における近視・強度近視の有病率を見ると、近視は1年生でも63.1%に上った(図)。
図. 小学生の学年別近視・強度近視有病率
(JAMA Ophthalmol 2019; 137: 1233-1239)
眼軸長※1から強度近視について見ると、強度近視有病率(眼軸長26.0mm以上の割合)は小学生で1.2%、中学生で15.2%。学年が上がるほど有病率は高かった。同氏らはこの結果を受け、文部科学省に現状を示し近視検診の重要性を訴えた。その後も裸眼視力1.0未満の小児が増加を続けたことから、文科省はついに2021年4月に全国規模で近視実態調査を開始した。
同氏らは、小学校1年生で近視が63%超だったことから、就学前の児童(約800例)を対象に追加調査を実施し、年齢別眼軸長の国・地域による違い(既報との比較)を報告した(J Clin Med 2022; 11: 4413)。台湾、香港、ドイツなどと比べて、日本人は男女とも就学前から眼軸長が長かった。(略)
ドライアイがあると近視が進行
バイオメトリーと環境因子について調べたところ、近業の種類によって水晶体厚が異なる可能性が示唆された。鳥居氏は「デジタル機器の使用時間が長いと水晶体が厚く、読書時間が長いと水晶体が薄い傾向にあった。」と指摘した。
近視の疫学調査で、以前からいわれている近視と高次収差※2の関係についても分かってきた。前述の同氏らの研究では、小中学生ともに球面収差が大きいと近視が軽い傾向にあり、中学生では4次収差が大きいと眼軸長が長く、全高次収差(THOA)が大きいと近視が強かった。
また、ドライアイでは高次収差が増加しているとの既報がある(Cornea 2008; 49: 133-138)。そのため近視と高次収差の関係を見るには、ドライアイも考慮する必要がある。同氏らの横断研究では、小学生はドライアイがあると近視が強く、中学生ではドライアイがあると眼軸長が長かった。縦断研究では、小学生ではドライアイがあると眼軸長の伸長量が大きく、中学生ではドライアイがあると近視の進行量が大きかった。(略)
眼軸長と涙液層破壊時間が関連
そこで鳥居氏らは、児童72例(平均年齢12.8歳)を対象に、後ろ向き研究を実施。眼軸長、脈絡膜厚、涙液層破壊時間(BUT)、高次収差などについて調査した。対象の平均BUTは5.7秒、平均脈絡膜厚は285.3μm、平均眼軸長は25.52mmだった(Sci Rep 2022; 12: 10891)。検討の結果、BUTと角膜高次収差、眼内高次収差は有意に相関していたが、全眼球高次収差との有意な相関はなかった。
また、眼軸長とBUTを含む生活因子の関係について多変量解析を行ったところ、眼軸長と関連する有意な因子としてBUTが挙げられた。眼軸長と高次収差の関係についての多変量解析では、眼内と全眼球が有意な因子だった一方、角膜は有意な因子ではなかった。脈絡膜厚と関連する有意な因子は、性、BUT、眼軸長だった。脈絡膜厚と眼軸長、脈絡膜厚とBUTの相関を見ると、眼軸長が長くなると脈絡膜厚が薄くなる(P=0.003)のは既報通りであったが、BUTが長くなると脈絡膜厚が厚くなる(P<0.001)というのは調べうる限りでは世界で初めての報告となった。(略)
- ※1 角膜から網膜までの長さ:長いと近視、短いと遠視の傾向にある
- ※2 1点から出た光が1点に収束しない場合のずれのことを収差といい、そのうち近視などが低次収差であり、高次収差とは不正乱視などを指す。高次収差は眼鏡による矯正はできない
(慶野 永) ーーー引用終了ーーー
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