◎ 先天性風疹症候群の眼症状:NTアームストロング PMID: 1564363
概要:先天性風疹は、さまざまな形で目に影響を与えます。眼への影響は、水晶体、網膜、毛様体、および角膜で見られます。先天性風疹症候群の眼症状は、先天性白内障、小眼球症、色素性網膜症、斜視、および緑内障です。これらの状態に対して外科的および医学的治療が利用されていますが、予防の必要性は重要であると考えられています。公衆を教育する医療提供者の責任は依然として重要です。( 1992 Apr;17(1):14-6.The ocular manifestations of congenital rubella syndrome N T Armstrong PMID: 1564363)
◎ 「風しん」という感染症をご存知でしょうか。かつては、「三日ばしか」とも呼ばれ、多くの人がかかる感染症でしたが、現在日本ではワクチンの定期接種が行われ、発症する人は少なくなりました。しかし、2013年には1年間で14,344人の患者が報告される大きな流行があり、まだまだ警戒が必要な感染症です。
風しんとはどのような感染症?
風しんとは、風しんウイルスによって引き起こされる感染症で、感染した人の咳やくしゃみなどに含まれる飛沫で感染が広がります。感染すると、約2〜3週間後に発熱や発しん、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。
子どもは比較的症状が軽いのですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000〜5,000人に1人位の割合で発生することがあります。また、大人がかかると、発熱や発しんの期間が子供に比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。
妊娠中に感染すると、おなかの中の子どもに影響があることも
さらに問題なのは、免疫の不十分な女性が妊娠20週頃までに風しんウイルスに感染すると、胎児も風しんウイルスに感染し、『先天性風しん症候群』と呼ばれる生まれつきの病気を引き起こすことがあります。主な症状は、先天性心疾患・難聴・白内障などで、妊娠1か月にかかると50%以上、妊娠2か月でも約35%に先天性風しん症候群の症状が見られるとされています。
知らないうちに感染してしまうリスク、感染させてしまうリスクが
風しんは、発しんなどの症状が出る前後1週間は人に感染させる可能性があります。感染に気づかないまま、家庭や職場などで妊娠初期の女性に接し、おなかの子どもにまでうつしてしまうということがあるかもしれません。子どもが先天性風しん症候群にならないためには、すべての人が風しんの抗体をもち、「感染しない/させない」という社会になることが重要です。
風しんはワクチンで予防できる
風しんは1回のワクチン接種で95%以上の人が風しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また、2回の接種で1回の接種では免疫がつかなかった人の多くに免疫をつけることができます。現在風しんワクチンは定期接種となっており、1歳の時と、小学校就学前の1年間の2回受けることになっています。
また、女性は昭和37(1962)年4月2日以降、男性は昭和54(1979)年4月2日以降に生まれた方であれば、風しんワクチンを少なくとも1回は公費で受ける機会があったため、風しんにかからないための抗体保有率が比較的高くなっています。しかし、それ以前に生まれワクチン接種の機会がなかった、特に40〜50代の男性の抗体保有率は比較的低く、問題になっています。
抗体保有率が低い40〜50代の男性のために・・・風しんの追加的対策
そのために、国は風しんの追加的対策を実施しています。
感染症の専門医でもある、神奈川県衛生研究所の多屋馨子所長は、「国は、昭和37(1962)年4月2日から昭和54(1979)年4月1日までの間に生まれた男性を対象とした、風しんの第5期定期接種を実施しています。この制度は、風しんの抗体検査と、検査で抗体が少ない事が分かった方のワクチン接種を原則無料とするものです。しかし、対象者のうち抗体検査を行った方の割合は、28.0%(2022年8月時点)と、じゅうぶんとは言いがたい水準となっています。現在、風しんの国内での患者報告数は少ないですが、今後、海外との往来が増えれば、感染地域からウイルスが国内に持ち込まれる可能性も高くなります。いったん、風しんウイルスが持ち込まれれば、成人男性はもちろんのこと、子どもたちの麻しん風しん混合ワクチンの接種率も下がっている現在、子どもたちの間でも広がってしまうと危惧しています。対象者の方は、まずは抗体検査をお願いします。」としています。
クーポンを利用して、無料の抗体検査を受けましょう
対象者には、国から抗体検査が無料になるクーポンが配布されています。検査の結果、抗体が少ない方は、無料でワクチンを接種することもできます。
クーポンには、『2021年3月まで』または『2022年3月まで』と印字されていても、『2025年3月末』までこの制度は継続していますので、お住まいの市町村(特別区)にお問い合わせいただき、是非、今、この制度をご活用ください。
取材 神奈川県衛生研究所 多屋馨子所長
コメント