元同僚の先生がこの本の原文を渡してくれました。この記事は、システム・ダイナミクスを用いて人口と経済の成長が地球に及ぼす影響を分析したローマクラブの報告書「成長の限界」の発刊から50年を振り返るものです。以下に要約を示します。しかし、歴史的な名レポートであり、サステイナビリティを重視する現在の世界の方針とは合致しているとはいえ、なぜO先生がこの200ページもある原著を現在の私の前に提示されたのかは今ひとつわかりません。
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「成長の限界」は、1972年に出版された書籍で、MITのジェイ・フォレスター教授が率いたチームが作成したWORLD3モデルをもとに、人口と物質経済の成長が食料、資源、汚染などの地球の限界とどのように関わるかを探求したものです。このモデルでは、5つの主要なサブシステム(人口、工業生産、食料生産、資源消費、汚染発生)の相互作用を考えます。人口と工業生産は自己強化型フィードバックで成長を促しますが、食料や資源や汚染などの制約によってバランス型フィードバックで縮小に向かいます。また、人口や工業生産の一部を保健や教育などに割り当てることで、出生率や死亡率に影響を与えます。
このモデルを使って、1900年から2100年までの期間で14種類のシナリオを検討しました。その結果、現状の政策を続けると21世紀前半に資源不足や汚染などの危機によって人口や経済が減少することが示されました。また、市場や技術で問題を解決しようとする政策も、コスト増加や設備投資減少などの副作用で効果が限定的でした。一方、人口と一人当たりの工業生産高を安定させる政策と技術推進政策を組み合わせることで、持続可能な社会を実現するシナリオも提示されました。
この報告書は、指数関数的な成長が地球に与える影響を科学的に示した画期的なものでした。しかし、その内容は多くの批判や誤解にさらされました。その一方で、現在でも多くの研究者や実務家がこの報告書に触発されて活動しています。また、「成長の限界」はシステム思考や東洋思想とも共通点が多く、私たちに物事を幅広く見る視点やぶれない軸を持つ力を与えてくれます。今日のグローバルな課題に取り組むために、「成長の限界」から学ぶことはまだまだ多いと言えるでしょう。
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