清澤のコメント:先日発表された唐突な金利の変更を解説しています。この度、日本で変えられたのは公定歩合ではなきのですね。金融緩和一色であったアベノミクスは安倍元首相の殺害とともに終了に向かい、アベノミクスを踏襲するとしていた岸田政権は、増税検討開始で政権も支持率低下傾向なのでしょうか?米国の金利引き上げはこの先で少しピークが見えてきたところで、今回は日銀は短期国債の金利上げを許し、国債の評価損増加を許す方向のようです。今後国債金利の上昇が続くと、巨額な日銀の国債評価損がさらに積み増される模様。そもそも、市場が消えるべき国債の金利を、日銀がオペレーションで制限するという事に無理がある。これもいずれは国民にひどいインフレとしてのしかかってくるのでしょうか?
ーーーーこの番組のテキストから抄出:ーーー
専門家へ経済のぶっちゃけ話を聞く番組「経済の話で困った時にみるやつ」。2022年最後となる金融政策決定会合で、日本銀行は現在の金融緩和策の一部を修正し、事実上の利上げを行うことを決めました。なぜこのタイミングになったのか?2023年の金融政策はどうなるのか?掘り下げていきます。
■予想外の“矛盾した政策” 背景に「脱アベノミクス」? 黒田総裁は「メンツ」を気にかけた?
赤荻 歩(TBSアナウンサー)
日銀は2022年最後の金融政策決定会合を終えました。そこで従来0.25%程度としてきた長期金利の変動幅を0.5%に拡大することを決めました。事実上の“利上げ”とみられています。
一方で、今回の措置について、黒田総裁は「金融緩和の効果をより円滑にするためのもので、利上げではない」と説明しています。その上で「出口戦略の一歩ということではない。議論するのは時期尚早」としています。
また「さらなる変動幅の拡大は必要ないし、今のところ考えていない」「共同声明の見直しは必要ない」としています。まず今回の措置をどう受けとめましたか?
末廣 徹(大和証券チーフエコノミスト)事実上の利上げって言っておきながら、黒田総裁は利上げじゃないという何かいろんなところで矛盾みたいなものが起きたという意味でも、こういう変更は誰も予想してなかった。理解が難しいような政策決定に至ったプロセスみたいなものを時系列に見ていく必要があると思っていて、思い切って10年前から振り返ろうかなとも思います。
2021年12月に第2次安倍政権が誕生し、2013年の2月に、政府・日銀は共同声明を発表します。できるだけ早くインフレ目標2%を達成するようにお互い頑張っていきましょうと。2013年の4月に黒田総裁が就任し、国債をたくさん買い入れて金利を押し下げる「異次元緩和」をやるんですけども、なかなか2%も達成できなかったと。そして2016年にもっと金利を下げてやろうってことで「マイナス金利」が導入されます。「マイナス金利」っていうのは、短期の金利を押し下げるっていう政策なので、長期の金利も全部、押し下げようっていうことで導入されたのが「イールドカーブコントロール」という政策。現在はこの「マイナス金利政策」と「イールドカーブコントロール」という政策が2016年からずっと続いているという状況ですね。
しかし、2023年の4月に黒田総裁がいよいよ任期切れで次の総裁が誰か注目されているんですけども当初は、次の総裁も基本的には黒田路線を引き継ぐだろうと、アベノミクスの継承という形で岸田政権も始まったわけですから、そんな変わらないと見られていた。ところが、12月になってからまさにアベノミクスの始まりであり、黒田緩和の始まりである共同声明を、改定した方がいいんじゃないかとか、政府はどうやら改定しようとしているみたいな話が出てきた。この共同声明が改定されるという話が出てきたのは、実は重要だったと思うんですよね。なぜ共同声明が変わるって話が出てきたかというと、アベノミクスの象徴を変えるっていうことなんで、まさに「脱アベノミクス」ですよね。脱アベノミクスが始まってるんじゃないかと。
ただ、黒田総裁の気持ちになると、政治サイドから「脱アベノミクス」を感じてこのままいくと、自分の10年間が否定されてしまうっていう気持ちが出たのではないかと。なので、金融緩和も維持したいんだけれども、最後の方にはその緩和の巻き戻しっていうのも少しやっておきたいと。今後、一気にアベノミクス路線、黒田路線がひっくり返ったときに「黒田総裁は10年間、間違っていたのではなくて、最後の方にはちゃんといろいろ考慮して動いていた」という評価になる。そういう意味で、黒田総裁は、最後にどう評価されるのかというメンツみたいなものも多分あったんじゃないか。
■次期総裁は「日銀出身」が“暗黙のルール” 名前が上がる2人の「有力候補」
赤荻 歩(TBSアナウンサー)
「脱アベノミクス」という流れがある中で次の総裁に関する話が出ました。2023年の3月9日から10日が、現在の黒田体制での最後の決定会合になり、その後3月19日に副総裁が任期を終え、そして4月8日には黒田総裁が任期を終えるという予定になっています。こうなると2023年の日銀の金融政策、並びに、新しい体制がどうなるかということになってきますね。
末廣 徹(大和証券チーフエコノミスト)
次期日銀総裁候補ですから、候補として名前が挙がってる2人、雨宮副総裁と中曽前副総裁ですね。通常、財務省出身のあとは日銀出身で順番っていうのが日銀総裁の暗黙のルールですね。財務省出身の黒田総裁が2期やったので、次は日銀出身の方で、お2人のどちらかだと思うんですけれども、中曽さんの雰囲気はあるのかなというのが最近の流れだと思っていた。中曽さんはどちらかというと国際会議などにたくさん出てきた人で、グローバルなネットワークがあります。かつてFRBの総裁を務めた、アメリカの財務長官イエレン氏は友達らしいです。
ただ、10年前の日銀・政府の共同声明を変えるという話は、政府だけでできる話じゃなくて、日銀サイドでもちゃんとその話をしてる人はいると思います。後は金融政策に関してもう1回点検・検証した方がいいんじゃないかという、日銀関係者がちらほら出てきていて、なんか日銀の内部から変わってる感じもするんですよね。そうすると、今、日銀の内部にいらっしゃるのは雨宮さんの方で、実はもう総裁に内定していて、そこに向けた動きがもう始まっているというようにも見えるかなと思いますね。そういう意味では7割ぐらいで中曽さんかなと思っていたのですが最近、雨宮さんの可能性も5割ぐらいになってきたという認識です。
■2023年は“円高”が進行? 異次元緩和の“出口”は?
末廣 徹(大和証券チーフエコノミスト)
私は来年、1ドル=120円ぐらいまでいくんじゃないかなと思ってます。例えばアメリカが今は利上げを止めようとしてますけど、やはり利上げをもっとするとかなったりとかもありうるので。あとウクライナの問題がもっと深刻になって、ドルを持ってないと不安だという、いわゆる有事のドル買いみたいなことが起こりやすい社会にもなっていると思うので、それではまた円安になるリスクってのは当然あると思うので、次の日銀総裁はやはりもうちょっと正常化してほしいっという思いが政治側にあるのは事実だと思いますね。なので次の総裁は緩和一辺倒ではない方になるのだろうと。
ただ、マーケット環境が、出口戦略を許してくれるかの方が私は難しくて重要ではないかなと思う。先日の日銀短観によると、輸出企業の想定為替レートが1ドル=130円ぐらいになっていて、あと3円ぐらい円高が進むと輸出企業は一気に為替で損するという話になってくる。日本経済のことを考えるとそろそろ円高もこれ以上いくときついかなっていう感じになってきている。
2022年は円安が進んで、インフレも進行したのが悩みだったわけですけども、インフレももう半年ぐらいで多分ピークかなと。インフレも結構弱まってくるとすれば出口に向かう必要がある。無理やり出口に向かって円高が進んで、企業業績は悪化する。こっちを心配しなきゃいけないんですかってなってくると、意外にそんな余裕はないんじゃないかなと。要するに出口に向かうぞと言って始まって、政治的にももうアベノミクスは忘れるんだみたいな感じで始まったとしても、「意外にも脱アベノミクス路線はできません」という可能性が私は高いかなと思ってます。
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