糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.3061]

網膜の「単幹動脈」(single trunk artery)または「単一主幹動脈」(single primary trunk artery)について

Q:眼科で眼底写真の判定をしていると稀ながら見ることがありますが、視神経乳頭から出る耳側の動脈が通常に見られる様に最初から上下の2本に分かれては居なくて、一本で網膜上に現れ、視神経乳頭と黄斑部の間で上下に分かれる形態であるものを何と呼びますか?またその動脈について注意すべきことはありますか?

 

A:眼底写真で観察される視神経乳頭から出る耳側の動脈が一本で網膜上に現れ、その後、視神経乳頭と黄斑部の間で上下に分かれる形態を「単幹動脈」(single trunk artery)または「単一主幹動脈」(single primary trunk artery)と呼びます。

このような形態は通常の網膜血管分布と異なり、網膜動脈が視神経乳頭からすぐに分岐するのではなく、ある程度進んでから分岐するため、視神経乳頭付近の血管パターンが異なることが特徴です。

 

「単幹動脈」(single trunk artery)や「単一主幹動脈」(single primary trunk artery)は、正常な解剖学的な変異(解剖学的バリエーション)としてみられる場合が多く、通常は特定の疾患や視機能への障害を直接引き起こすことはありません。しかし、このような変異が影響を及ぼす可能性がある状況やリスクもわずかながらいくつかあります。

  1. 網膜血流障害のリスク
    単一の動脈幹が一度に血流を供給しているため、血管閉塞が起こるとその影響が広範囲に及びやすくなります。特にこの単幹動脈の領域で動脈閉塞が発生すると、通常の血管分布に比べて一度に広範囲の網膜に血流不足が生じ、重篤な視力低下や視野欠損につながるリスクがあります。
  2. 網膜手術やレーザー治療における注意
    網膜剥離手術やレーザー治療など、眼底部での処置が必要な場合には、この血管の変異を考慮する必要があります。特に黄斑付近での治療中に誤ってこの動脈を損傷すると、網膜の広範囲に血流障害を引き起こし、治療後の視力予後に悪影響を及ぼす可能性があります。
  3. 視神経乳頭検査での注意点
    単幹動脈は視神経乳頭から離れた位置で分岐するため、視神経乳頭周辺の血管分布が一般的なものとは異なります。視神経乳頭の評価や緑内障などの診断で乳頭周辺の血管構造を確認する際、異常所見と誤解されないように注意が必要です。
  4. 血管疾患の早期発見
    単一の主幹動脈が原因で直接的に疾患を引き起こすことは稀ですが、動脈硬化や高血圧などの全身性血管疾患がある場合には、血流障害が生じやすい部位と考えられるため、定期的な経過観察が勧められます。

通常、単幹動脈自体は視力や視野に影響を及ぼすことは少ないですが、リスクを認識し、患者の血管系疾患を総合的に管理することが重要です。

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