Medullated nerve fiber網膜有髄神経線維の眼底写真を見せると患者さん本人は驚きますが、その病態について、その見かけの特徴、病的意味と原因、それに対する眼科での対応を簡単に説明します。
網膜有髄神経線維(Medullated nerve fiber)とは?
網膜有髄神経線維(もうまくゆうずいしんけいせんい)は、眼底検査で偶然発見されることのある特徴的な所見のひとつです。この状態は、生まれつき視神経線維に髄鞘(ずいしょう)という白い層が残っていることによって生じます。通常、視神経線維は眼球内に入ると髄鞘がなくなりますが、まれに一部の線維が髄鞘を保持したまま残ることがあります。
見た目の特徴
眼底写真を見ると、網膜の神経線維層に沿って白くもやがかかったような部分が広がっているのが特徴です。これは、まるで雲がかかったように見えたり、光が拡散しているように見えたりするため、初めてこの写真を見た患者さんは驚くことがあります。しかし、実際にはこれは病気ではなく、視機能に大きな影響を及ぼすことはほとんどありません。
病的な意味と原因
網膜有髄神経線維は、基本的には生まれつきの特徴であり、病気ではありません。そのため、多くの場合、視力や視野に影響を及ぼすことはありません。しかし、まれに広範囲にわたる場合や、黄斑部(視力の中心)にかかる場合には、軽度の視力低下や視野異常が起こることがあります。また、ごくまれにこの所見が他の神経や発達異常と関連することがありますが、そのようなケースは非常に少数です。
眼科での対応
通常、この所見を見つけても特別な治療は必要ありません。ただし、患者さんが視力低下を感じる場合や、ほかの目の異常を伴う場合には、定期的な経過観察を行うことがあります。診断を確定するために視野検査を行うこともありますが、大部分の方は特に問題なく生活できます。
まとめ
- 網膜有髄神経線維は、視神経線維に髄鞘が残ることで生じる先天的な特徴です。
- 眼底写真では白くもやのかかったように見えますが、多くの場合、視力には影響を与えません。
- 基本的に病気ではなく、特別な治療も不要です。
- まれに視力や視野に影響する場合があるため、必要に応じて経過観察を行うこともあります。
このように、網膜有髄神経線維は「見た目は特徴的だけれど、多くの場合は心配のいらない所見」です。眼科医が診察でしっかりと確認し、必要に応じてフォローすることで、安心して過ごすことができます。
図は:有髄神経線維層 : アイオワ大学眼科から借用
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