M3のメールで⇒リンク;「頭頸部の身体診察 その1――眼の診察」2023年9月11日 羊土社:が届きました。いまさらと言わずに読んで見ました。この記事は、レジデントノート2022 Vol.24 No.1「身体診察 いざ、『型』から『実践』へ」中野弘康、石井大太/編(発行:羊土社)より転載されたものです。原著の版権を尊重し、文章でポイントのみを抄出します。医学生は、頭頸部のポリクリ(診察実習)でも聞かれそうなところですね。一般の患者さんはこの記事は読み飛ばしてください。
ーーー要点ーーーー
- 頭頸部診察を儀式化させない! 陽性所見と陰性所見の実際を身につけ、意識しながら診察する!
- commonな病態、criticalな病態にフォーカスをあてたスクリーニングフィジカルをとる!
はじめに
診察で最初に行うのが、「眼瞼結膜の蒼白の確認」。目まぐるしく状況が変化する外来診療の場では、頭頸部診察は鑑別診断や次の検査の内容を考えるためのいわゆる「Thinking time」になり易い。
スクリーニングでありながらもcommonな病態とcriticalな病態にフォーカスをあてて、陽性所見と陰性所見をしっかりと拾いあげるための頭頸部診察を身につけよう。
眼の診察
(1) 眼瞼結膜
下眼瞼を翻転させ、貧血や点状出血の有無を観察する。眼瞼結膜を観察する際は、眼窩下縁に検者の指を添えるようにする。(清澤注:眼科では上眼瞼も反転する。疼痛の原因になる結膜異物が入っていることもある。)
- conjunctival rim pallor(結膜外側辺縁の蒼白化)
眼瞼結膜の観察で貧血の有無を評価する際は、結膜外側辺縁の毛細血管の蒼白化があるかどうかを確認。
② 感染性心内膜炎の点状出血斑
感染性心内膜炎では、微細な菌塊血栓が毛細血管に塞栓を起こすことで、小出血をきす。不明熱の患者さんではあわせて確認しておきたい所見。(清澤補追:心内膜炎の結膜出血を私は見たことがないが、眼底で中心に白い部分がある斑状出血:ロート斑は、白血病や心内膜炎でしばしば見られる。)
(2) 眼球結膜
眼瞼結膜の観察を行った後、患者さんに上方視を促し、強膜の観察をする。強膜の観察では黄染と充血がないか確認する。
- 黄染(黄疸)の観察 :明るくしてみる
② 充血の観察
眼球結膜の充血は病歴とあわせて、充血している部位の評価が鑑別に重要。特にcommon diseaseである結膜炎と、眼科的緊急疾患のひとつである急性閉塞隅角緑内障は鑑別すべき。
結膜炎は一般的に円蓋部結膜と呼ばれる、辺縁部の結膜において充血がより目立つことが多い。発症様式としては緩徐発症であり、視力には異常をきたさないのが特徴。
急性閉塞隅角緑内障は角膜輪部(虹彩の周囲)に充血がみられることが多く、毛様充血と呼ばれる。一般的には発症経過は突然~超急性であり、著しい視力の低下や悪心・嘔吐などの随伴症状を伴うことも多い。(清澤補追:眼科では毛様充血はむしろブドウ膜炎であることが多い)
(つづく)執筆者 石井 大太(Daita Ishii)浦添総合病院 病院総合内科
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