清澤のコメント:「歯内治療の現在とこれから」昨年末から歯の治療を受け続けています。そのうちの一本は以前に治療されていたのですが、再悪化しておりました。自分の体力の減退も感じておりますから、抜歯と人工歯根移植といったラジカルな方法は避けたく、保存的に治療してもらいました。今週までに内部の充填が終わり、近々かぶせ物を載せて終了の予定とのことです。最近は、再生歯内治療(REP)といって、幹細胞、成長因子、バイオマテリアルを利用して、歯髄組織の再生を促進する方法を加えた更に新しい治療法も行われるようです。
ーーーーー記事要点ーーーーー
今月の月刊保団連(June 2024 6 No1425、P42-45)に「歯内治療の現在とこれから:第2回歯髄保存療法の意義と実査」という記事が大蔵直人先生と野杁由一郎先生によって発表されています。
1:VPTのパラダイムシフト:歯髄保存療法(Vital pulp therapy:VPT)は、「深在性う蝕や外傷により損傷した生活歯髄を可能な限り保存する治療法を指す。」歯髄炎に対する理解は変化し、以前は「露髄した=抜髄が必要」とされたが、現在は違う。炎症や感染が進み、歯髄内の神経や血管が障害を受けたとしても可逆性の歯髄炎であれば、適切な治療で歯髄保存が可能になりつつある。たとえ、歯冠部壊死しても、歯根部歯髄が保存可能なっ倍は、歯頸部断髄が有効である。感染部の除去が予知性の高いVPTとなる。
2:VPTを行う前に:
- 治療前検査:①自発痛、②病歴、③生活歯髄診査(重要)、④咬合診、⑤打診、⑥根先部の触診、⑦ポケットプロービング、⑧デンタルX線検査
- 最終的な診断・治療方針の決定:歯髄保存が可能なマイクロスコープでの4つの評価基準が有る。歯髄の常態をマイクロスコープ下で丁寧に観察するのが重要。
3:VPTの流れ(専門用語も多いので短縮):浸潤麻酔、ラバーダーム防湿、齲歯完全除去、ダイヤモンドバーで露髄面研磨、次亜塩素酸Naでケミカルサージェリー、止血、MTA直覆材添付、マイクロ下で厳密仮封。一か月後にインレー保存修復、7か月後に臨床症状とデンタルX線で成功を確認。
4,VPTの未来予想図」VPTでは手術用顕微鏡を使い、歯髄の感染部位を正確に特定後、完全に齲歯を除去し、MTA(mineral trioxide aggregate)によって歯髄を外部から密封することでマイクロリーケージを防ぎ、口腔内から分離することが肝要。なお、糖尿病では成功率が低下する可能性が有るので、VPTを行う際は注意が必要。(続く)
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