- 医学界新聞には、めざせ「ソーシャルナース」! 社会的入院を看護する(19)カリフォルニアドーターがやって来たとき(石上雄一郎)という記事が出ています。今日はそれを紹介します。カリフォルニアから来た娘症候群(The Daughter from California syndrome)とは、これまで疎遠だった親族が、近辺の親族と医療関係者の間で時間をかけて培われた合意に反して、死にゆく高齢患者のケアに異議を唱えたり、医療チームに患者の延命のための積極的な手段を追求するよう主張したりする状況を表す言葉です。「娘」となっているが、性別や血縁の関係性は問わない。 「カリフォルニアから来た娘」は、しばしば怒りっぽく、自己評価が高く、明晰と自認し、情報通を自称する。対象の高齢患者とその介護者、医療関係者との同意を否定し、安らかな終末を阻害するとされる。日本の医療や介護現場では「ぽっと出症候群」という言葉が知られている。NPO法人パオッコの資料では「遠くに暮らす子どもは、年に1、2度突然やってきて、治療法がどうだとか、こうだとか言うんだよね。普段の状況を何も理解しないまま」という医師談が紹介されています。
- 元記事の要点:
-
カリフォルニアドーターがやって来たとき
膵がん患者で抗がん薬治療を受けていた80歳女性のケースです。治療が身体的に負担となり、患者自身は治療中止を希望していました。同居する長男とも話し合い、在宅医療への移行を準備していましたが、遠方に住む長女が「病院のせいで悪化した」と主張し、大学病院への転院を要求しました。複数の病院に情報提供を試みましたが受け入れ先はなく、在宅医療も導入できず患者は亡くなりました。このような家族の対応は「カリフォルニアドーター症候群」と呼ばれることがあります。
Step 0: カリフォルニアドーターを予防する
医療者が疲弊する事態を防ぐため、遠方家族の存在を早期に把握し、対応することが重要です。以下の手順が推奨されます:
- キーパーソン以外の家族を把握し、一貫した情報共有を行う。
- 家族全員同時の面談を実施し、情報を公平に伝える。
- 意思決定窓口を選定し、説明内容を記録として残す。
具体的には、遠方家族にも医療方針の共有を提案し、電話などで医療者自身が直接説明することが有効です。
Step 1: 医療者自身のアンガーマネジメント
長時間かけて決定した治療方針が突然変更を要求されることは医療者にとって大きなストレスです。しかし、感情的な反応を避け、冷静に対応することが求められます。次のような心構えが有効です:
- 自分の「べき思考」を自覚し、コントロールできないことを受け入れる。
- 患者の価値観を中心に据えた対応を心掛ける。
Step 2: 怒りに対応し、真意を探る
遠方家族が怒りを抱く理由として、否認や罪悪感が挙げられます。これを理解し、以下のように対応します:
- 感情のドレナージ:怒りの感情を相手に話してもらう。
- NURSEスキルを活用:相手の感情を認め、共感を示し、対話を促す。
たとえば、「娘さんがお母さんのことを大切に思っているのが伝わります」といった声掛けが効果的です。また、セカンドオピニオンの希望が病院への不信感による場合、冷静に状況を整理して対応します。
Step 3: カリフォルニアドーターの背景を探る
家族の背景を患者や他の家族に聞くことで、対応の糸口が見つかる場合があります。また、家族内で意見の相違がある場合には以下の措置を取ります:
- 家族全員参加の話し合い:必要に応じてビデオ通話を活用する。
- 迅速な相談対応:セカンドオピニオン希望には原則応じる。
ただし、患者の利益にならない治療要求や倫理的に限界を超える要求には応じる必要はなく、複数の医療者で透明性のある判断を行うことが重要です。
CASEのその後
患者の死後、長女は「母に何もしてあげられなかった」と自責の念を語り、涙しました。彼女の行動は、遠方での孤独感や親孝行できなかった後悔から来ていたことが分かります。
コメント