点描画法のスーラと『グランド・ジャット島の日曜日の午後』
点描画家【スーラ】細か〜い理論で作られた色と光に注目!【グランド・ジャッド島の日曜日の午後】
山田五郎 オトナの教養講座は毎回芸術や技術に関する深い蘊蓄を述べる動画でチャンネル登録者数 71.1万人という有力なチャネルです。2021/09/03のこの回では、スーラという画家の描き方を説明しています。印象派は見えるものを写すのではなく、見て感じたことをキャンバスに表現するのかと思っていました。しかし、この画家スーラに至っては、網膜の視細胞の仕組みも知らないままに網膜上での色の混合の特性を知って、その色の特性を色のついた多数の点を描き、見る人の網膜に見せたい色合いを再現させようとしたようです。この画家の一生は31年と短く、彼の出現でフランスの印象派が瓦解するほどの影響を残したのだそうです。
絵を理論的に描くスーラ「グランド・ジャッド島の日曜日の午後」にも まるで科学者のような?スーラの研究結果がてんこ盛り。普通の緑に見える緑も本当はただの緑じゃない。(もはや緑って言いたいだけ) さぁ五郎さんの解説を見てスッキリしましょう。
動画の要旨:
「点描画」というと、無数の小さな点で絵が描かれている独特な技法を思い浮かべるかもしれません。その点描画を美術史において確立したのが、フランスの画家ジョルジュ・スーラです。彼の代表作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』は、現在アメリカ・シカゴ美術館に収蔵されており、日本にも持ち出されないほど貴重な作品です。
スーラは1859年にパリに生まれ、国立美術学校に進学しましたが、在学中から既成の芸術に満足せず、独自のスタイルを模索していました。25歳のときに出品した作品がサロン展で落選したことをきっかけに、自由な表現を認める「アンデパンダン展」の創設に加わります。彼は、印象派の「瞬間の光を捉える」という考え方をさらに進化させ、色彩や光を科学的に分析し、理論に基づいて絵を描くという新しい道を切り開きました。
スーラの最大の特徴は、色を混ぜて使うのではなく、赤・青・黄などの原色の小さな点を並べることで、目の錯覚を利用して色を見せる「点描画法(ディヴィジョニズム)」です。これは、現在のテレビ画面のピクセルやカラー印刷の原理に近いものです。人間の目は、近くに配置された異なる色を自然に混ぜて知覚するため、スーラの絵は遠くから見ると滑らかなグラデーションが感じられるのです。
『グランド・ジャット島の日曜日の午後』は、この技法を駆使して描かれた代表作で、セーヌ川の中州で市民たちが休日を過ごす様子を描いています。ただし、その画面はあまりにも静かで動きがないとも言われ、当時の印象派の画家たち、特にモネやルノワールからは「理屈っぽすぎる」と批判されました。彼らは自然の“印象”をそのまま感じ取って描くことを重視していたのに対し、スーラは「どうすればより明るく美しく見えるか」を計算し、理論に基づいて制作していたのです。
スーラはまた、絵の枠(縁取り)にまで配慮し、補色関係を意識した色彩構成を行っていました。このような科学的かつ理論的なアプローチは、20世紀絵画の出発点となり、フォービズムやキュビズムなど、後の多くの芸術運動に影響を与えました。
わずか31歳で亡くなったスーラですが、彼が残した作品と理論は、後の美術界に大きな道筋をつけたのです。色と光を理論で操る“色彩のセザンヌ”とも呼ばれる彼の挑戦は、今なお多くの人々に驚きと発見をもたらしています。
追記:Île de la Jatteはパリのブーローニュで森の北方、エトワール凱旋門から3キロほど北にあるセーヌ川の中州ですが、4000人ほどの住民がいる島だそうです。今もパリの最高の高級住宅地に隣接しています。
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