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[No.3622] 「人工着色料」が子どもの行動に影響?~FDAの新たな動きと私たちの食卓~

「人工着色料」が子どもの行動に影響?~FDAの新たな動きと私たちの食卓~

視覚や注意力に関連する問題は、私たち眼科医にとっても無関係ではありません。この話を聞いて、色鮮やかなマーブルチョコレートを思い浮かべました。

約50年前、米国のミラー医師は、人工着色料が一部の子どもに集中力低下や落ち着きのなさを引き起こす可能性を指摘しました。その後の研究でも、ADHDと診断されていない子どもにも影響が出る可能性があるとされ、ミラー氏らは2021年に報告書を、2022年に総説論文を発表しています。

こうした流れを受け、カリフォルニア州は2024年に主要な着色料を学校給食から排除する法律を制定。そしてFDAも、2026年末までに6種類の合成染料を市場から排除したい意向を示しました。FDAは法規制ではなく、企業との協力で実現を目指しています。

一方、食品業界では、州ごとのバラバラな規制に困惑しており、統一的な方針が求められています。実はこれらの着色料は食品だけでなく、サプリメントや子ども用の薬にも使用されており、今後は医薬品への適用拡大も検討されています。

では代替手段はあるのでしょうか。FDAは記者会見で、ビートジュースやニンジンジュースといった天然の色素を例に挙げ、すでにヨーロッパでは企業が天然色素への移行を進めていると説明しました。ただし、天然色素は発色が弱く、製品の見た目にこだわる企業には課題も残ります。

この問題は「着色料だけ」の話にとどまりません。こうした染料が含まれる食品の多くは、糖分や脂質の多い超加工食品であり、健康全体への影響が懸念されています。着色料の排除だけでは慢性疾患の予防にはつながらず、食の質全体を見直す必要があると専門家は指摘します。

私たち医療従事者や保護者には、次のような視点が求められています。

  • 一部の子どもに強く出るリスクに注意する

  • 着色料よりも食材の質に目を向ける

  • 「きれいな色」に惑わされず、自然な食品を選ぶ意識を持つ

着色料の規制は、子どもの健康を守る一歩にすぎません。視覚的な「見た目の美しさ」ではなく、体にやさしい食生活を日々の選択で実践していくことが大切です。


※参考文献:

JAMA. 2025年5月2日掲載記事「FDA Wants to End the Use of Synthetic Food Dyes—and How It Might Do So」

doi:10.1001/jama.2025.7142

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