ご近所の話題

[No.3742] 今朝の高円寺・桃園川緑道公園で出会った「エンジェルストランペット」

今朝の高円寺・桃園川緑道公園で出会った「エンジェルストランペット」

~美しい花に秘められた目の薬と毒の話~

今朝、高円寺の桃園川緑道公園を歩いていたところ、ひときわ目を引く美しい黄色の大輪の花に出会いました。下向きにラッパのような形で咲くその花は、まるで天使の楽器のように見えます。

この花の名前は**「エンジェルストランペット(Angel’s Trumpet)」、日本ではキダチチョウセンアサガオとも呼ばれます。学名はBrugmansia(ブルグマンシア)**。南米アンデス地方原産の植物で、日本では観賞用として植えられており、都会の公園でも時折見かけることがあります。

大きな花と芳香、そして毒性

この植物の特徴は、なんといっても下向きに咲く直径20cm前後の大きなラッパ状の花。花の色は、白、ピンク、オレンジ、黄色などさまざまですが、私が今朝見かけたのは鮮やかな黄色でした。開花時期は初夏から晩秋にかけて。夕方から夜にかけて、甘い芳香を漂わせるのも特徴のひとつです。

しかし、この美しい花には注意が必要です。花、葉、茎、種子すべてに強い毒性があり、誤って口にすると中毒を起こす可能性があります。特に含まれる成分のひとつ「スコポラミン」や「アトロピン」は、神経系に作用し、幻覚、錯乱、心拍上昇、瞳孔散大などの症状を引き起こします。

実は目の治療にも使われていた?

この植物に含まれるアトロピンやスコポラミンは、医療の世界、特に眼科では非常に重要な薬として知られています。

1. アトロピン点眼薬

アトロピンは、**瞳孔を広げる(散瞳)**作用や、ピント合わせの力(調節)を一時的に麻痺させる作用があります。このため、以下のような目的で使われてきました。

  • 小児の屈折検査時の調節麻痺(正確な近視・遠視の測定)

  • 近視進行抑制(低濃度アトロピンとして)

  • ぶどう膜炎などの炎症時に虹彩の癒着を防ぐ目的

2. スコポラミン点眼薬

スコポラミンも同様に散瞳や調節麻痺に使われることがあります。アトロピンに比べ作用時間が短いため、より一時的な効果を目的とした場合に用いられます。

このように、猛毒とされる植物の成分が、適切に使用すれば治療薬として活躍しているのは、薬草や天然毒の面白い一面です。

小さなお子さんやペットがいるご家庭へ

この花は観賞用として公園や住宅地でも育てられていますが、小児の誤食やペットの接触により中毒事故が起きるケースもあります。見た目に惹かれて触ったり、香りをかいだりするだけでも油断はできません。花の美しさを楽しみつつも、「触れずに見るだけ」にとどめていただければと思います。

おわりに

高円寺の緑道を彩るこの華麗な花は、その見た目とは裏腹に、医薬品の起源でもあり、危険な毒でもある植物です。私たちの目の健康に関わる歴史を持つことを知ると、少し身近に感じられるのではないでしょうか。

日々の散歩や通勤途中にも、こうした自然と医学の交差点を見つけることができるのは、都会生活の中での小さな楽しみのひとつです。次回はまた、別の花とその「眼科的トリビア」をご紹介します。


📸(この記事の写真:2025年7月16日朝、杉並区・桃園川緑道公園にて撮影)


参考情報

  • Brugmansia(キダチチョウセンアサガオ):厚生労働省 薬用植物データベース

  • アトロピン点眼薬:日本眼科学会「小児の近視に対する低濃度アトロピン点眼のガイドライン」

  • 中毒事例:日本中毒情報センター「植物による中毒事例集」

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事

  1. 若者のスマホ・ゲーム依存とメンタルヘルス:自殺リスクとの関連を米国研究が警告;JAMA最新論文

  2. 今朝の高円寺・桃園川緑道公園で出会った「エンジェルストランペット」

  3. 現役世代の負担を減らすには?社会保険・税制改革を巡る議論から見える将来の日本