小江戸・川越を歩く ― 雨にしっとりと映える蔵の街
小江戸と呼ばれる川越の街を、歩いてみました。東京から意外に近く、大泉学園から関越道に乗れば、所沢を過ぎておよそ10キロほどで川越インター。高速を降りてからも市街まではすぐで、思ったよりも気軽に行ける距離です。本川越駅近くの立体駐車場に車をとめて、のんびりと散策を始めました。
市内には古い土蔵造りの商家が軒を連ね、黒塗りの重厚な壁と白い漆喰の対比がどこか懐かしさを誘います。建物の保存が丁寧に行われているだけでなく、歩道の石畳も美しく整えられており、ゆっくり歩くだけで心が落ち着いていきます。土蔵の町並みに並行して、近代的なマンションも立ち並び、古さと新しさが無理なく溶け合っているのが印象的でした。都内に通勤する人々にとっても、住みやすい町なのでしょう。
通りには喫茶店や食事処、土産物店が並び、どこからともなく甘辛い香りが漂ってきます。川越は古くからウナギの街としても知られ、立派な暖簾を掲げた老舗のうなぎ屋さんがいくつもありました。香ばしい匂いに心惹かれましたが、本日は並んでまで入ることはせず、街を見て歩くことを優先にしました。
途中で立ち寄った熊野神社には、夏の名残りを感じさせる茅の輪くぐりのしつらえがありました。しっとりとした雨模様の中で、青々とした茅の輪が参道に立ち、清らかな空気が漂っています。その右脇には「縁結び横丁」と名づけられた小さな露店モールが続いており、軽食を並べる若い店員たちの声が柔らかく響いていました。
街のシンボル「時の鐘」は、今も現役で時を告げているそうです。黒塗りの木造の塔が空に向かって伸び、周囲の家々と調和した姿はまるで絵巻物のよう。近くには庭が美しく整えられ、町並みにとけ込むように設計されたスターバックスもありました。歴史的景観を損なわずに現代の感性を生かした造りで、訪れる人々の憩いの場になっています。
そのまま歩みを進めると、大正時代の洋風建築が残る「大正浪漫夢通り」に出ます。どこか懐かしい看板や、当時の面影をとどめた建物が並ぶ通りで、「大正」と名のついたカフェに入り、ホットカフェオレをいただきました。窓越しに通りを眺めながら、ゆったりとした時間が流れていきます。雨に濡れた石畳が光り、川越の町が一層しっとりとした風情を帯びていました。
この日は小雨まじりの天気でしたが、傘をさすほどでもなく、二時間ほどの散歩を十分に楽しめました。観光地として整備されていながらも、人々の暮らしの息づかいが感じられる川越。古いものを大切にしながら新しい文化を受け入れているこの町の姿勢には、医療の現場にも通じるものがあるように思います。次はゆっくりとうなぎを味わいに、また訪れてみたいと思いました。



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