支え釣り込み足と「勢いのあるときほど足元を見る」話
私は柔道部出身ではなく、柔道の技名も高校の体育で聞きかじった程度の記憶にすぎませんが、ふと「支え釣り込み足(ささえつりこみあし)」という技を思い出しました。相手が前に攻め込んでくる勢いを、こちら側が腕で軽く“つり上げる”ようにして重心を崩し、軸足を支えるように払って転がす技だったはずです。相手を大きく持ち上げるというより、前のめりの力を逆手に取るところが柔道らしい巧みさです。
面白いのは、相手が「いける」と思って踏み込んだ瞬間ほど、最も崩れやすいという点です。勢いがあると人は前方に重心が出やすく、その一瞬の偏りが技の入口になります。
この構造は、政治や相場にも少し似ているように思います。たとえば最近の高市政権の攻勢や、日経株価の力強い上昇など、順風に乗ってぐいぐい進んでいるように見える局面ほど、内部のゆるみや外からの揺さぶりに無自覚になりがちです。勢いに乗ると足元の危うさが見えにくくなるのは、人や組織も同じです。
柔道では、強気で踏み込んだ瞬間に支え釣り込み足が決まる。政治も市場も、熱気が高まったときほど冷静な視線が必要で、むしろ好調なときこそ静かに足元を固める姿勢が長く立ち続けるための条件なのでしょう。
勢いに釣られず、自分の軸を保つこと。
柔道の一手が、今日のニュースの読み解き方にも小さな示唆を与えてくれるように感じます。



コメント