高円寺の庭先に咲くマーガレット ――視覚と心をつなぐ冬の花
今朝、高円寺の住宅の庭先で、ひときわ鮮やかなピンク色の花が目に入りました。調べてみると、これはマーガレット(Argyranthemum frutescens)。濃いピンク色の舌状花と中央の黄色い筒状花がくっきりと分かれたいわゆる「デイジー型」の花です。冬から春にかけて園芸店でよく見かける定番の草花で、この時期、店先や住宅の花壇を明るく彩ります。
マーガレットはキク科の多年草で、原産地はカナリア諸島。温暖な気候を好みますが、日本では冬越しが難しい地域もあり、一年草のように扱われることもあります。細かく切れ込みのあるやわらかな緑色の葉を持ち、株はこんもりと丸くまとまりやすいのが特徴です。白花が代表的ですが、近年はピンクや濃紅色、クリーム色など品種改良が進み、花径も大小さまざまです。日当たりと風通しの良い環境でよく育ち、寒さの残る時期でも比較的花持ちがよいのも魅力です。
さて、この「中央が黄色で周囲に花弁が並ぶ」形は、一見すると一輪の花のようですが、実は小さな花の集合体です。中央の黄色い部分は多数の筒状花、外側の花弁に見える部分は舌状花と呼ばれます。私たちが「一つの花」と認識しているものは、顕微鏡的には多数の花の集まりなのです。これはキク科植物に共通する特徴で、タンポポやヒマワリも同じ構造を持っています。自然の造形の巧みさには、いつも驚かされます。
眼科医療との関連でいえば、まず「色覚」が思い浮かびます。この鮮やかなピンク色は、ヒトの三色型色覚のうち、特にL錐体(長波長感受性錐体)を強く刺激する色調です。赤緑色覚特性を持つ方では、このピンクがややくすんで見えたり、背景の緑とのコントラストが弱く感じられたりすることがあります。外来で色覚検査を行う際、「赤い花がどのように見えるか」といった具体例を示すと、患者さんの理解が深まることがあります。
また、キク科植物はアレルギーとの関連でも話題になります。マーガレットは虫媒花であり、スギやブタクサのように大量の花粉を空中に飛散させる風媒花ではありません。そのため、空気中花粉による結膜炎の原因となることは比較的少ないと考えられます。ただし、キク科植物に接触性皮膚炎やアレルギー反応を示す体質の方もおられます。花を愛でることとアレルギー体質の管理は、うまく両立させたいものです。
さらに興味深いのは、花の「放射対称性」と視覚認知の関係です。ヒトは放射状に整った形を「美しい」「安定している」と感じやすい傾向があります。これは視覚野におけるパターン認識の特性と関係していると考えられています。マーガレットの均整のとれた花弁配列は、私たちの視覚系にとって処理しやすい形であり、そのことが親しみやすさや安心感につながっているのかもしれません。
寒さの残る2月、コンクリートの脇で鮮やかに咲くピンクの花を見ると、単なる視覚刺激以上のものを感じます。明るい色彩は網膜を刺激し、その情報は大脳皮質へと伝わりますが、同時に情動とも結びつきます。眼科医として日々「見える」という機能を扱っていると、こうした花の存在が、視覚と心をつなぐ役割を担っていることに改めて気づかされます。
視力や視野の数値は大切です。しかし、それ以上に「何を見て心が動くか」という体験もまた、視覚の大切な側面ではないでしょうか。高円寺の庭先に咲いていた一鉢のマーガレットは、そのことを静かに教えてくれているように思えました。
追記:名札のSmashというのは?;写真の花は、マーガレット(Argyranthemum frutescens)の園芸品種の可能性が高いです。名札にある「Smash(スマッシュ)」は、品種名(シリーズ名)と考えられます。最近の園芸店では、従来の白いマーガレットだけでなく、赤・ピンク・濃桃色などの鮮やかな花色の改良品種が多数流通しています。「Smash」はそのような改良系の一つと思われます。
形態的特徴からの判断
写真から確認できるポイントは以下の通りです。
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花はキク科特有の舌状花+筒状花の構造
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花色は濃いピンク~赤で中心部は黄色
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葉は細かく切れ込んだ羽状のやわらかい葉
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草姿はコンパクトで株立ち状
これらは典型的なマーガレット系統の特徴と一致します。



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