高円寺緑道公園を歩いていて、今年はじめての水仙に出会いました。
「あれ、少し小さいな」と思ったのが第一印象です。ふだん見慣れている水仙よりも丈が低く、花もやや小ぶりに感じられました。
水仙はヒガンバナ科スイセン属(Narcissus)の多年草で、地中に球根をもつ植物です。原産は地中海沿岸ですが、日本にはかなり古い時代に渡来し、今ではすっかり“日本の早春の花”という印象をもたれています。とくに白い花被片に黄色い副花冠をもつタイプは、日本水仙(Narcissus tazetta)の系統としてよく知られています。
今回見かけたものは、花の形や色合いからみてこの系統に近いように思われました。ただし、草丈が20cm前後と低めで、花もやや小型です。水仙には園芸品種が非常に多く、矮性(わいせい)品種も数多く作出されています。公園の植栽では、風で倒れにくく管理しやすい小型種が選ばれることもありますから、特別に珍しい原種というよりは、都市緑化向けの園芸品種かもしれません。
水仙の花の構造はなかなか合理的です。外側の白い部分は花被片、中央のラッパ状の部分を副花冠と呼びます。この黄色い副花冠が視覚的なアクセントになり、昆虫にも人の目にもよく目立ちます。白と黄色のコントラストは、曇り空の下でもくっきりと浮かび上がります。医療の世界でも、コントラストは視認性を高める重要な要素ですが、自然界でも同じ原理が働いているわけです。
水仙といえば、ギリシャ神話のナルキッソスの話を思い出します。泉に映る自分の姿に恋をし、やがて命を落とし、その場所に咲いたのが水仙であったという物語です。この逸話から「ナルシシズム」という言葉が生まれました。花がややうつむき加減に咲く姿は、水面をのぞき込む青年の姿になぞらえられています。視覚と自己認識の関係を象徴する話として、私はいつも興味深く思います。
さて、きれいな花には注意点もあります。水仙の球根にはリコリンなどのアルカロイドが含まれ、強い毒性があります。ときにニラやノビルと間違えて誤食し、嘔吐や下痢などの中毒症状を起こす事例が報告されています。葉は確かによく似ていますが、水仙には独特の匂いがあり、切ると粘り気のある汁が出ます。観賞用植物であっても、球根は決して食用にならないことは覚えておくべきでしょう。
早春のまだ冷たい空気の中、丈の低い水仙が足元で静かに咲いている姿は、どこか控えめで、それでいて確かな存在感があります。私は花壇の前でしばらく立ち止まり、「今年も春が始まったな」と感じました。季節を告げるその姿を素直に楽しむのが一番なのかもしれません。



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