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[No.4633] 南砂公園でひと足早く咲いた桜 ― 今年の開花はどこから始まるのか

南砂公園でひと足早く咲いた桜 ― 今年の開花はどこから始まるのか

3月19日、江東区の南砂公園を歩いていると、ほかの木々がまだ固いつぼみのままである中、ひときわ目を引く桜に出会いました。枝先にまとまって咲く、やや濃いピンク色の花。よく見ると花びらの数が多く、しかも花は下向きに房のように垂れています。これは一般的なソメイヨシノではなく、「枝垂れ桜」、しかも八重咲きの系統、いわゆる八重紅枝垂に近いタイプと考えられます。

桜と一口に言っても種類は多く、開花の時期もそれぞれ異なります。私たちが「桜前線」としてニュースで耳にするのは主にソメイヨシノの開花ですが、それよりも早く咲く品種、逆に遅れて咲く品種が存在します。今回南砂公園で見かけた枝垂れ桜のように、やや早咲きの性質を持つものは、周囲のソメイヨシノがまだつぼみの段階でも、一足先に春を知らせてくれます。

同じ時期、靖国神社の標本木でも開花が確認されたと報じられましたが、これはまさにソメイヨシノの「開花宣言」にあたるものです。つまり、東京全体としては桜の季節が始まりつつあるものの、実際の街の風景としてはまだ「咲き始め」の段階にあるということです。南砂公園で見たような早咲きの桜は、その先触れの役割を果たしているとも言えるでしょう。

一方で、3月21日に目黒区の目黒川沿いを訪れると、様子はまた違っていました。桜の名所として知られるこの場所にはすでに多くの人が訪れていましたが、肝心の桜はまだつぼみの状態でした。枝先はふくらみ始め、開花直前の緊張感のある状態ではありますが、花はほとんど見られません。いわば「人の春」と「植物の春」に少し時間差がある印象です。

この違いは、桜の品種の違いに加えて、立地や環境の影響も大きく関係しています。日当たりや地面からの輻射熱、周囲の建物の影響などにより、同じ東京都内でも開花のタイミングは微妙に異なります。特に枝垂れ桜は個体差が大きく、早く咲くものはかなり早く、遅いものはソメイヨシノと重なることもあります。

今回の南砂公園の桜は、そうした中でも比較的早咲きの性質を持つ個体であり、まだ冬の気配が残る空気の中で、確かに春の訪れを感じさせる存在でした。満開の桜並木の華やかさとはまた違い、「最初の一輪」に出会うような静かな喜びがあります。

眼科医の立場から見ると、このような淡いピンクからやや濃い色調へのグラデーションや、花弁の重なりによる立体感は、視覚的にも非常に興味深いものです。特に八重咲きの桜はコントラストがはっきりしており、年齢を重ねた方でも比較的見やすい花と言えるかもしれません。春の散策は、視機能の変化に気づくきっかけにもなります。

これから数日で、目黒川の桜も一気に花開いてくるでしょう。早咲きの枝垂れ桜に始まり、ソメイヨシノが街を彩り、さらに遅咲きの八重桜へと季節は移ろっていきます。桜は「一斉に咲く花」という印象がありますが、実際にはこうした時間差の中で、長く楽しめる花でもあります。

南砂公園で見たあの一枝は、今年の春の始まりをそっと教えてくれる、静かな案内役のように感じられました。春は、確実に近づいています。

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