その他

[No.39] 顔面のアテロームなどについて:眼瞼皮膚の角化を伴う諸疾患(瞼のいぼ?)

初日の診察:アテローマを切除する患者さんがいました:コメド(稗粒種)の大きいものの感じです。コメドですと圧出しますが、大きいアテローマは摘出します。

アテロームは真皮嚢胞であり、実際には皮脂腺の詰まりによって引き起こされる良性の皮膚病変です。 その内容は、嚢胞エンベロープ内に含まれる皮脂腺の分泌物です。 その性状は通常、弾性から固体までの範囲です。 通常、頭、首、背中に見られます。 この皮膚病変は何年も休眠状態を保つことがあります。 腐敗した白い分泌物が嚢胞から搾り出されることがありますが、これは問題の恒久的な解決策にはなりません。 アテロームは感染を引き起こす可能性があるため、早々に外科的に除去する必要があります。 炎症の場合、患者はアテロームの場所で痛み、腫れ、つつく感じを経験するかもしれません。 顔にアテロームが見つかった場合、大きな傷跡が残る可能性があります。 あなたがアテロームを持っているならば、あなたはそれが炎症を引き起こして外科医の診察予約を待つべきではありません。 この手術は、アテローム全体、つまり嚢胞、その内容物、およびそのエンベロープを除去するのが唯一の治療法です。

ーーーーー旧記事採録ーーーーー

2007年9月18日

411 眼瞼皮膚の角化を伴う諸疾患(瞼のいぼ?)

(眼科医清澤のコメント:眼瞼皮膚はともかく、角化という言葉が検索には不適切かもしれないと反省。稗粒腫、汗管腫、紛瘤、いぼ、脂漏性角化症:など等いずれも瞼の皮膚の変化で、必要に応じて切除します。この項目もしばしば検索されたお題ですが、とりあえず読み直して、今回は結膜疾患に振り分けておきます。2018.10.7)ーーー

成人の眼瞼に出る皮膚の角化を示す疾患をお調べの方が居るようです。そのあたりを調べなおして説明をしてみます。国内のページよりも海外のページのほうが専門家の記載でもはるかに詳しく、画像も豊富なものが多いので、それを探そうとするのですが、内外の医学単語が意外に対応して居らず苦労します。

まずは、

1、稗粒腫 milium (ひりゅうしゅ、はいりゅうしゅがより正しい読み方らしいですが、)
ひりゅうしゅ1~2mm大の白い小腫瘤(嚢胞)で、眼の回りの柔らかな皮膚にも出来易い疾患です。稗粒腫は表皮嚢胞に限局したごく小さなものであり、角質が皮膚内にめくり込んでしまい皮膚内に角質の塊が形成される状態です。

ひえ稗とはひえです。

組織学的には表皮嚢胞と同一です。特に痛みなどの症状はないのですが、数年かけて角質が少しずつ溜まると、あるとき限界に達して、中の角質が破れて出てしまうと、再び肌はきれいに平らになります。

しかし稗粒腫はいくつもでき、順繰りに治っていきますから、常に目の周りに小さな白いプツプツがあるという状態となります。(図:http://library.med.utah.edu/kw/derm/pages/habe_13.htm)

眼科では、美容的に除去を希望されれば、治療を行います。治療は、角質の塊をとってしまえば良いので、針で表皮を小さく切開して鋭匙で中身を掻き出すか、小さく切開してにきびの膿を出すピンセットで圧迫するかすれば、傷跡はほとんど残らずに取れます。

次は
シリンゴーマ2、汗管腫Syringoma:
汗管腫は目頭や下眼瞼に多発する肌色で少し盛りあがりのあるイボのような1~3mmのしこりです。(図:http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Syringoma.jpg)

汗管腫とは汗腺のような組織が目の周りなどに異常に増殖してしまう状態で、良性腫瘍の一つです。見た目は皮膚表面が凸凹した感じだけです。

性別では女性に多い傾向があります。薬では治りませんのでとるならば、切除やレーザー・電気メスで焼く治療を行います。数個の場合は一度に治療可能ですが、数が多い場合は数回に分けて治療したり、目の下のタルミを取る手術に準じた術式を用いて皮膚を切り治療します。

3、粉瘤(アテローマatheroma)
毛穴の皮膚が袋状になり中に老廃物(アカなど)が溜まった状態で、脂肪腫と混同される事があります。押すと異臭を伴う中身が出て来る事があります。詳しく分類すれば、「表皮嚢腫」(真性粉瘤)と 「毛ほう嚢腫」(仮性粉瘤)の2種類があります。

Wikipediaでアテローマをみますと、粉瘤腫(ふんりゅうしゅ、 epidermal cyst, 日本では atheroma (あてろーま)とも呼ぶ)と記載されています。つまり、欧米ではatheromaは主にこの粉瘤腫や粉瘤をさす言葉ではなくて、粥状動脈硬化を示す動脈硬化した血管の状態だけを示す単語のようです。

デルモイドですからgoogleでatheromaをキーワードにイメージ検索をしても眼の周りの粉瘤は見つからず、epidermal cystないしdermal cystで探さなくてはなりません(図:http://www.thieme-connect.com/ejournals/abstract/sps/doi/10.1055/s-2006-949121;jsessionid=563E939FDABF5A363DE04750FD672F3C.jvm3)。図はデルモイドです。

(皮膚科や眼科で使われる日本語の)アテローマは、最初に述べた通り、新陳代謝によって外皮から剥がれ落ちる垢などの老廃物が、皮膚内部に溜まることによってできる良性の腫瘍の総称です。

放置しておくと化膿する事がしばしばありますが、こうなると傷跡が残り目立つ傷跡になってしまいます。 急に大きくなるようでしたら、早めに切除した方が良いでしょう。しこりと同等の幅での切開を必要とします。

4、角化を伴うその他各種の疣贅(いぼ)
角化と言うのはケラチンが皮膚の細胞中に沈着し上皮が肥厚して厚く硬くなる現象です。眼瞼皮膚にそのような状態を示す代表的疾患には、上記の疾患のほか老人性疣贅、 皮角(ケラトアカントーシス)、 尋常性疣贅、ケラトアカントーマ、それに皮膚線維腫などがあります。

これらはそのまま残しても害は無いのですが、目立つときや拡大傾向がある場合には眼科でも治療します。このうち尋常性疣贅は皮膚科に依頼して液体窒素で治療しますが、他は麻酔して切除する方法で対応します。これらを簡単に説明してみます。

4-1、脂漏性角化症”seborrheic keratosis:
seborrheic keratosis

老人性疣贅とも呼ばれます。 脂漏性角化症 “眼瞼皮膚に生じる良性の病変としては頻度が高いものです。(図:http://www.friendlylight.net/friendlylight_erbium.htm)

悪性化することはないですが基底細胞癌との混在も報告されており、注意が必要です。ときに細菌感染などにより潰瘍を形成したり、出血を伴うなど肉眼的に悪性腫瘍に類似することがあり、疑わしい症例では生検が必要となることもります。

組織所見では基底細胞層が極性を失わずに増殖することが脂漏性角化症の病理組織の基本です。

4-2、皮角:

ひかく
皮角とは病名というよりも硬く角のように盛り上がった症状のことを言います。 原因は様々な病気で起こります。 老人性疣贅から起こることが多いですが、皮膚癌の前駆症状であるボーエン病や日光角化症などから出ることもあり病理検査が必要です。治療は局所麻酔を行い切除します。図は頭の皮膚にでたものです。

4-3、
尋常性疣贅 VERRUCA VULGARIS (Common Wart).:
パピローマ尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は簡単にいえば乳頭腫ウイルスでおきるウイルス性の「いぼ」のことです。「尋常性」は皮膚科で使われる医学用語で、意味は原因不明ということです。(図:http://www.atlasophthalmology.com/atlas/photo.jsf;jsessionid=4B3FB60770026DFA206A21C8BD250B6C?node=5397&locale=en)今は原因がわかっています。HPV(Human Papilloma Virus)の感染が原因です。

ひとパピローマウイルスの中には子宮頚癌を起こす型もあり、人にはなじみのある大きいウイルスです。ヨクイニンなどでの治療が行われます。

4-3、
ケラトアカントーマ(無理に翻訳すれば良性角化棘細胞腫Keratoacanthoma):
ケラトアカントーマケラトアカントーマは、主に中年~高齢男性の顔面に生じる腫瘍です。初めは半球状で、数週の間に急激に増大し噴火口状になるものの、数ヵ月で自然軽快するという特徴的な経過をとる皮膚腫瘍です。(図:http://www.fleshandbones.com/imagebank/figure.cfm?ISBN=0702015881&chapter=38&figure=S15881-38-f05.jpg)良性の腫瘍ですが、まれに浸潤やリンパ節転移を起こすこともあります。

このケラトアカントーマは、病理組織検査を行っても悪性の有棘細胞癌と区別できないことが多い皮膚腫瘍で、最終的には、臨床症状(見た目)や経過などを含めて診断をする必要があります。治療をせずに経過観察をする場合もありますが、外科的に切除するのが望ましいという考え方が強いようです。

4-4、
皮膚線維腫dermatofibroma:
皮膚線維腫は、小さくて赤色ないし茶色をしたこぶ(結節)で、皮下の軟らかい組織をつくり出す線維芽細胞が産生したコラーゲンというタンパク質がたまってできます。 皮膚線維腫はよく見られるまれではない状態で、触れると硬いこぶがふれます。

単独にひとつだけできるのが普通です。原因は、けが、虫刺され、毛をそるときにできた切り傷などです。皮膚線維腫は無害で、症状もほとんどなく、ときにかゆみを伴う程度です。できていることが気になったり、大きくなってきたりしたとき以外は特に治療もしません。

デルマトフィブローマ瞼の皮膚線維腫の図が見つからないので他の部位の皮膚線維腫を示します。(図:http://www.fleshandbones.com/imagebank/lightbox.cfm?ISBN=0723431949&chapter=2&figure=M31949-02-f112.jpg&methodof=add)

解るというには程遠いですが、何らかの参考にしていただけたらと思います。引用の図の元ページもご覧ください。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

Categorised in: 結膜炎・花粉症・ものもらい (結膜疾患)

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