清澤のコメント:医学界新聞の11月15日号のトップ記事です。ニューロダイバーシティで{発達障害}をとらえなおす:ニューロダイバーシティとは,脳や神経,それらに由来する個人レベルでのさまざまな特性の違いを,多様性ととらえて相互に尊重し,社会の中で生かしていく考え方です。「発達障害をどう治療するか」から「発達障害が障害にならない社会をどうめざすか」へのパラダイムシフトになり得るとしています。
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近年,脳・神経科学の研究が大きく進んだことを背景に,ニューロダイバーシティ への関心が世界的に高まっています。ニューロダイバーシティとは,脳や神経,それらに由来する個人レベルでのさまざまな特性の違いを,多様性ととらえて相互に尊重し,社会の中で生かしていく考え方(MEMO)です。この考え方は,「発達障害をどう治療するか」から「発達障害が障害にならない社会をどうめざすか」へのパラダイムシフトになり得るのではないでしょうか。発達障害当事者の立場からニューロダイバーシティの重要性を考察して『みんな 水の中―「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』 (医学書院)を上梓した横道氏と,発達障害支援の実践者である村中氏。2 人がニュー ロダイバーシティの意義やこの概念を浸透させることで実現したい社会の在り方について語り合いました。
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MEMO ニューロダイバーシティの歴史的背景と発展:ニューロダイバーシティは,自閉スペクトラム当事者と支援者による権利擁護運動として 2000 年以降に勃興した概念である。脳・神経科学の研究が飛躍的に進展して,fMRIやMEG,PETなどの脳機能イメージングにより脳や神経に由来する違いが可視化されたことを背景に,近年世界的な関心を集めている。研究によって集積 された脳や神経,認知のメカニズムに関する知見をベースにしているため,ニュー ロダイバーシティは「多様性を大切にしよう」というスローガンにとどまらず,科学的な裏付けを備えた社会運動となっている。
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村中先生のご著書『ニューロダイ バーシティの教科書―多様性尊重社 会へのキーワード』(金子書房)を読み, 対人支援者からの発達障害者に対する 人間理解の深さと温かさに感銘を受け ました。
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発達障害者の生きづらさを引き 起こすのは何か:横道 私たち当事者の目線からは,ニューロダイバーシティは「多様性が存在する」と主張するだけでなく,「マ イノリティの文化を持つ発達障害者を 定型発達者と同様に尊重してほしい」という積極的な意味合いを持ちます。
現代社会では,マジョリティである定型発達者によって「この時はこのように振る舞うのが当たり前だ」という価値規範や行動規範が形成されており,私たちは発達特性上それに沿った行動が難しいためです。
生きづらさを軽減するための 4 つの支援ネットワーク:重要な支援ネットワークとして, ①病院やクリニックなどの医療サービ ス,②行政と民間の福祉サービス,③ 自助グループ活動,④文学と芸術の利用を挙げていますね。医療サービスでは,大きく 2 つ 挙げられます。まずは発達障害の診断を受けることで,発達障害者としての自己を受容できる点です。診断は,自分が抱えてきた謎を ひもとくための重要なキーとなります。もう1つは治療薬の処方を受けられる点です。治療薬の効果は限定的であるものの,私たちが定型発達者の世 界に適応するためには有効です。
医療の負担軽減に向け「発達障 害に理解ある支援者」の育成を:私たち発達障害者はニューロダイバーシティが浸透した社会環境を求めている。そう社会に訴え続けるのが重要だと考えています。
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