大阪大学から「医療・ヘルスケアにおけるエビデンスに基づく政策立案の強化:日本における希少疾患に関するコモンズ・プロジェクトへのステークホルダーの関与」という論文が出ています。7つの研究テーマというので、具体的な病名が出てくるのかと思ったのですが、希少疾患の何を研究するかと行政への指針的なものであり、具体的な病名は含まれてはいません。
平易な言葉での要約
ステークホルダーの関与は、希少疾患の分野における効果的な政策立案にとって重要です。しかし、この関与のための実用的な方法はまだ確立されていません。そこで、私たちは「コモンズ・プロジェクト」を立ち上げ、貴重な政策立案情報を生み出し、ステークホルダーの効果的な協力方法を模索しました。本稿では、2019年から2021年にかけて、患者、家族、研究者、元政策立案者など43名が参加し、25回連続で開催したワークショップの経緯と結果について解説する。「コモンズ」で行われた議論の主な成果は、希少疾患の患者が直面する困難の概要の提示と、優先度の高い研究テーマの策定でした。まず、希少疾患の患者が直面する困難を10のカテゴリーに分類しました。第二に、「生活の支障」「経済的負担」「不安」「通院の負担」など7つの研究テーマを重点課題として特定した。プロジェクトの過程では、参加者間の能力開発、交流の機会、相互理解、共感などのプラスの効果が確認されました。これらの知見は、希少疾患分野や政策科学の枠を超えて、ステークホルダー間の共創や患者さんと市民の参画など、これからの社会に役立てることができます。本研究の結果を踏まえ、希少疾患分野の政策ステークホルダーとのコミュニケーションを開始し、政策実施を目指しています。
ーーーアブストラクトから抽出ーーー
特に優先度の高い基準に適合する項目を抽出
優先的に取り組むべき研究テーマについて検討を行った。①心理面や生活面などさまざまなQOLに関わる、②患者の苦痛や負担を軽減し自立へと導くことに関連する、③患者が課題と感じやすく、適切に取り組めば効果を実感できる-など7つの判断基準を設定し、各基準にどの項目が適合するかについて議論した。そして、①および②は将来の希少疾患に関する研究を深めるために特に優先順位が高いとし、この2つの基準に当てはまった項目を抽出した。その結果、生活面に関するテーマ(日常生活の支障、経済的な負担、就労就学の悩み)、精神心理面に関するテーマ(不安、悲観、遺伝性疾患に特有の心理)、医療に関するテーマ(通院の負担)の7項目が浮かび上がった(図)。またこれらに関する熟議を通して、ステークホルダーが政策形成の過程に関与できることも示された。
ーーー記事の要旨ーーー
- 希少疾患当事者の困難の全体像と研究テーマの抽出:大阪大学大学院医の倫理と公共政策学分野の古結敦士氏らは、10種の希少疾患の患者・患者家族らとともに、希少疾患当事者が直面する困難の全体像について整理した上で、優先的に取り組むべき研究テーマを抽出した。
- 7つの研究テーマ:「日常生活の支障」「通院の負担」「遺伝性疾患に特有の心理」「社会的な孤立感」「情報の不足」「医療制度の不備」「医療者とのコミュニケーション」の7つのテーマが特に重要であると報告した。
- ステークホルダーの関与の重要性:医療分野において政策決定する際、その過程にステークホルダーが関与する重要性が指摘されている。希少疾患当事者の声を反映した研究の推進や政策の形成に貢献することが期待される。
- 参考文献:このページには多数の参考文献が含まれている。詳細はページの最後にあるリンクを参照されたい。
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