眼科医療経済等

[No.3135] アイフレイル予防で健康寿命を延ばす 平塚義宗先生;聴講印象録

アイフレイル予防で健康寿命を延ばす 平塚義宗先生(順天堂)をビジョンケアセミナー2024で聞きました。認知症の原因としてランセット認知症予防委員会がリスク要因として視覚障害を加えたという事は喜ばしい新情報でした。

聴講メモ:お話によれば、アイフレイルは既に知られるとおり、加齢に伴い目の機能が弱まる変化です。人の平均寿命は健康寿命より約10年短く、人々が要介護に陥るのは極力避けたいところです。眼の問題自体は介護が必要になる理由では8番目ですが、見え方を改善させることは多くの他項目の衰弱予防に役立ちます。見え方の劣化でフレイルは2.5倍にもなります認知症の原因としてランセット認知症予防委員会はリスク要因として視覚障害を加えた新しい評価を掲載しています(末尾の清澤の脚注を参照)。視覚障害が病院内転倒とも関連しており、その評価値量が転倒防止に有効です。10項目のアイフレイルチェックリストがネットに出ており、それを測定することには妥当性があります。アイフレイルの啓発が行われていますが、その認知度はメタボリック症候群78%、ロコモティブ症候群43%、フレイル37%に比べてアイフレイル11%とまだ高くはありません。薬局、薬剤師など眼科の外からの啓発も重要です。アイフレイルアドバイスドクターやアイフレイルサポート視能訓練士も広がっています。今後医療需要は減り、全眼科医は2043年まで増え続けます。このような医療経済面からもアイフレイルに関する啓蒙活動には意味があります。

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注:The Lancet CommissionsVolume 404, Issue 10452 p572-6282024810

認知症の予防、介入、ケア:ランセット常任委員会の2024年報告書

Prof Gill Livingston, MDほか

ショーアウトライン

認知症に関するランセット委員会の2024年の更新は、認知症の予防、介入、およびケアに関する新たな希望に満ちた証拠を提供します。高所得国では年齢別発症率が減少する一方で、人々が長生きするにつれて認知症を持って生きる人の数は増加し続けており、予防アプローチを特定し実施する必要性が強調されています。認知症に関するランセット委員会の2020年の報告書以降の新しい研究を要約し、システマティックレビューとメタアナリシスを優先し、認知的および身体的予備力がライフコース全体でどのように発達するか、および血管損傷の軽減(例えば、喫煙を減らして高血圧を治療することによる)が加齢性認知症の発生率の低下にどのように寄与した可能性が高いかを示すさまざまな研究からの結果を判断しました。エビデンスは増加しており、以前よりも強力になってきています 認知症の多くの危険因子 (すなわち、教育の減少、難聴、高血圧、喫煙、肥満、うつ病、運動不足、糖尿病、過度のアルコール摂取 [すなわち、>21英国単位、>12米国単位に相当]、外傷性脳損傷 [TBI]、大気汚染、社会的孤立) に取り組むことで、認知症を発症するリスクが軽減されます。このレポートでは、未治療の視力喪失と高LDLコレステロールが認知症の危険因子であるという新しい説得力のある証拠を追加します。

 

更に詳しく調べてみると:

ランセット委員会の2024年の報告から「未治療の視力喪失が認知症の危険因子であるという新しい説得力のある証拠を追加」したという部分をもう少し詳しく説明しましょう

 

未治療の視力喪失と認知症リスクに関する新たな証拠

2024年のランセット委員会の報告は、認知症予防に関する包括的な取り組みを更新する中で、未治療の視力喪失が認知症の重要な危険因子であるとする新しい証拠を示しました。視力喪失がどのように認知症の発症リスクに影響を与えるのか、その背後にあるメカニズムとエビデンスについて具体的に説明します。

  1. 視力喪失と認知症リスクの関連性

ランセット委員会は、視覚障害が認知機能の低下や認知症発症に及ぼす影響を強調しました。これまでの研究では、視力喪失が日常生活や社会的交流に支障をきたすことで、認知症のリスクが増加する可能性が指摘されていましたが、2024年の報告では、その関連を裏付ける具体的な証拠がより詳細に示されています。

  • リスクの大きさ
    未治療の視力喪失は、認知症リスクを約1.5倍から2に増加させることが大規模なコホート研究で確認されました。この影響は特に65歳以上の高齢者に顕著であり、視力を維持するための適切な治療が認知機能の低下を防ぐ可能性が高いと示唆されています。
  1. 視力喪失が認知症リスクを高めるメカニズム

視覚機能の低下が認知症に結びつく理由は、多岐にわたります。

感覚的刺激の減少

視覚は脳に多くの刺激を与える感覚であり、視力の低下がその刺激を減少させることで、脳の特定の領域(特に視覚野や感覚統合を担う領域)の萎縮や機能低下を招きます。このプロセスは、脳の可塑性に悪影響を及ぼし、認知機能全般の低下につながると考えられています。

社会的孤立

視力喪失は移動能力やコミュニケーション能力を制限し、社会的なつながりの喪失を引き起こします。社会的孤立や孤独感は、認知症の独立した危険因子として広く認識されており、視力の低下がこのリスクを増加させる重要な要因となります。

併存疾患との関係

視力喪失の背景には白内障や加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症などの疾患が関与していることが多く、これらの疾患自体が認知症リスクを高める可能性も考えられます。

  1. 未治療の視力喪失の管理がもたらす可能性

ランセット委員会は、未治療の視力喪失を予防可能な認知症の危険因子として位置付けています。これに基づき、視力低下を早期に発見し、適切な治療を施すことが認知症予防に大きく寄与する可能性が示唆されています。

  • 治療の効果
    白内障手術や矯正眼鏡の使用が認知症リスクを低下させる可能性を示す研究が増えており、視力の改善が患者の生活の質(QOL)を向上させるだけでなく、脳の健康にも良い影響を与えるとされています。
  • 具体的な推奨事項
    高齢者を対象とした定期的な視力検査や、視力低下が確認された場合の早期介入が強く推奨されています。視力ケアは、全体的な健康管理の一環として重要視されるべきです。

結論

未治療の視力喪失が認知症の危険因子であるという新しい証拠は、視力ケアの重要性を再確認させるものです。視力を守ることは、単に視覚的な利便性を確保するだけでなく、高齢者の認知機能を維持するための重要な手段であることが示されています。この報告は、医療機関や政策立案者に対して、視力喪失に対する包括的な介入プログラムを導入する必要性を強調しています。

アイフレイルアドバイザードクターの胸章が届きました。

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