ブルーライトカットメガネは眼精疲労や睡眠の質を「改善しない」可能性:を論じた総説が発表されている。そもそもブルーライトの罪は、慶応大学教授であった坪田一男氏により提唱され、眼鏡メーカーがブルーカット眼鏡という商品を大々的に宣伝することに伴って日本で流通が広がった。最近になって同グループからはブルーではなく、紫光が近視抑制に有効であるという別の説が提唱されている。ブルーライトを夕方から夜にかけてスクリーンから浴びると、睡眠周期がずれるなどの弊害を考えて、ブルーライトを減光させる眼鏡の有用性が提唱されたという経緯があった。今回の研究は、自分が行った研究ではなく、既存の論文をまとめて新たな結論を導くというメタ解析という方法で書かれたものである。
東京都ではブルーライトカット眼鏡を眼鏡製造業者が無償で学童に配布しようとして、これを日本眼科学会等の反対で、中止させたといった事象も見られています。(当記事末尾注;参照)
なお、ブルーライトの害については、
ブルーライトとは、波長が380~500nmの青色の光線のことで、太陽光やパソコンやスマートフォンなどの画面から発せられる。ブルーライトは、体内時計を整えるなどの健康に良い効果もあるが、過剰に浴びると目や心身に悪影響を与える可能性がある。
ブルーライトが目に及ぼす害としては、以下のようなものが挙げられた。目の疲れや痛み、目の眩しさやチラつき、網膜や角膜上皮細胞へのダメージ、加齢黄斑変性症のリスク増加。
ブルーライトが心身に及ぼす害としては、以下のようなものが挙げられた。頭痛や肩こり、睡眠リズムの乱れや睡眠不足、イライラ感やストレス、メラトニン分泌の抑制。
ブルーライトの害を防ぐためには、以下のような対策を取ることがすすめられていた。
パソコンやスマートフォンの使用時間を減らす、パソコンやスマートフォンの連続使用をやめる、ブルーライトカットメガネやディスプレイカバーを使用する。部屋の照明やディスプレイの輝度を変える、寝る前にパソコンやスマートフォンを見ない
ーーー記事採録ーーーー
ブルーライトカットメガネが、非ブルーライトカットメガネと比べて目に特別な効果がないと新たな研究は結論づけた。これまでの研究では、これらのメガネが目の疲れ、睡眠の質、頭痛、全体的な目の健康を改善するとされていた。
Cochrane Database of Systematic Reviews(コクラン共同計画の中核をなすデータベースで、一定の基準を満たした論文をベースに治療、予防効果を相対危険度のかたちで提供している)に掲載されたメタ分析によれば、ブルーライトカットメガネが睡眠の質、目の疲れ、目の健康に違いをもたらさない可能性があることが判明した。
研究者らは、6カ国で行われた17件の研究データを調べ、成人参加者は5人から156人に及んだ。
これまでの研究では、ブルーライトカットメガネは睡眠パターンを改善し、目の疲労を軽減し、コンピュータビジョン症候群(デジタル眼精疲労、長時間のデジタル機器の使用によって引き起こされるドライアイ、目のかすみ、頭痛、眼精疲労を指す包括的な用語)を改善すると結論づけられていた。
International Journal of Ophthalmology(国際眼科学会誌)に掲載された研究によると、デジタル機器やLED機器に含まれるブルーライトは、網膜にストレスやダメージを与え、近視や睡眠パターンに影響を与える可能性があるという。
しかしLED機器は非常に新しいため、研究者によればブルーライトが目に与える長期的な影響についての研究はあまり出揃っていない。
研究では、ブルーライトが網膜にストレスをかけ、睡眠に影響を及ぼす可能性があることがわかったが、ブルーライトカットグラスが解決策であるかどうかは不明であることもわかった。メタ分析では、17の研究のうちどれも、ブルーライトカットグラスと非ブルーライトカットグラスの間で、視覚の疲労感や視覚のパフォーマンスのスコアに大きな違いがなかったと結論づけられている。
短期的に有利だという結論は得られていない
レビューの主著者であるローラ・ダウニーは声明で「私たちは、コンピュータの使用に関連する視覚の疲労を減らすために、ブルーライトカットフィルター付きの眼鏡レンズを使用することによる短期的な利点はないかもしれないという結果を見出しました」と述べた。「これらのレンズが視覚の品質や睡眠関連の結果にどう影響するかは現時点では不明ですし、長期的な視網膜の健康への影響についても何も結論は出ていません。こうした眼鏡を購入する際には、これらの調査結果を理解しているべきでしょう」 ブルーは可視光スペクトルの7色のうちの1つだ。継続的に晒されることで網膜が損傷し、加齢黄斑変性症(加齢によって起こる目の病気で、中心視力が鈍くなる)のような視力障害を引き起こすと考えられている。ブルーライトが危険なのは、その短くて高いエネルギーの波であるとヘルスラインは報じている。それは皮膚や目に有害な影響を与える紫外線よりも、少しばかり波長が長くてパワーが弱いだけだ。 一般に信じられていることとは逆に、ブルーライトの最大の発生源は太陽であり、携帯電話やコンピュータのようなLED機器ではない。蛍光灯や白熱電球もブルーライトを発する。ブルーライトカットメガネは、ブルーライトを遮断し、フィルタリングすることで、有害な影響を軽減する。眼科医のニコール・バジックは、非営利医療センターであるクリーブランド・クリニックに、ブルーライトカットメガネをかけることは有害ではないが、光過敏症の患者は、代わりにFL-41の色合いを検討すべきだと語った。FL-41はブルーとグリーンの光をカットし、どんなレンズにも適用できる。 米国国立眼科研究所による研究によれば、子どもたちは電子デバイスからのブルーライトをより多く吸収するため、ブルーライトが及ぼすリスクに対してより敏感だ。この研究では、8歳未満の米国の子どもたちは1日に平均2時間以上、8歳から10歳の子どもたちは6時間、11歳から14歳の子どもたちは9時間、デジタルデバイスを使用していると報告されている。機器から発せられるブルーライトは網膜にストレスを与え、眼精疲労、頭痛、姿勢の問題、疲労による不快感をともなうコンピュータビジョン症候群を引き起こす。
Arianna Johnson
清澤の脚注:東京都でブルーライトカット眼鏡を無償で学童に配布しようとした事象に関する記事は、以下のようなものがあります。
- ジンズ、東京・渋谷区へのPC用眼鏡寄贈を中止 – 日本経済新聞:眼鏡専門店「JINS」を展開するジンズホールディングスが、パソコンなどから出るブルーライトの影響を軽減する眼鏡を東京都渋谷区に寄贈する計画を中止したという記事です。日本眼科学会など7団体が発表した「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」を踏まえて判断したということです。
- ブルーライトカット、子供への推奨は「根拠なし」 眼科学会らが意見書「発育に悪影響与えかねません」: J-CAST ニュース:日本眼科学会や日本眼科医会などの眼科6団体が、「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」と題した文書を共同で発表したという記事です。ブルーライトカット眼鏡にはエビデンスに乏しく、いくつかの問題点があると指摘しています。
- ブルーライトカット眼鏡、子どもに「悪影響」 学会公表:朝日新聞デジタル:日本眼科学会や日本眼科医会などの眼科6団体が、ブルーライトカット眼鏡は子どもに推奨する根拠がないとする見解を公表したという記事です。ブルーライトカット眼鏡の装用は発育に悪影響を与えかねないと呼びかけています。
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