アイフレイルと心療眼科(身体症状症とうつ病を中心に)という題で気賀沢一輝先生が日本の眼科2023年11号に記事を書いて居ます。その概略を採録させていただきます。なお、私はうつ症のスクリーニングに、本文表2に示されたものではなく(⇒リンク)CED-Dという質問票を常用しています。
〇 アイフレイルは、加齢によって眼の機能が低下することで、視機能が弱くなった状態、またはそのリスクが高い状態を指します。アイフレイルは、身体症状症とうつ病の診断基準を知っておくことが有用です。アイフレイル自己チェックリストには、うつ病でも生じやすい眼症状が含まれています。身体症状症は、神経症、身体表現性障害(DSM-4)と呼ばれていたものを DSM-5 で再定義したものであり、DSM-5 のうつ病診断基準は網羅的で眼科の日常診療で使いこなすのは難しいという現場の声があるため、それを構造化および簡略化したものを提示するスクリーニング用ツールがあります。アイフレイルと身体症状症とうつ病は重なる場合があるので、これまでは「気のせい」として放置していた非器質的な愁訴に対しても、その精神医学的背景を理解し、可能な範囲で対症療法を提案し、必要であれば精神科・心療内科と協力していくことが高齢者のQOLの向上に有用と思われます。
表 1 身体症状症(Somatic Symptom Disorder)の 診断基準(抜粋)
基準 A:1 つまたはそれ以上の苦痛を伴う,または日 常生活に意味のある混乱を引き起こす身体 症状。
基準 B:身体症状,またはそれに伴う健康への懸念に 関連した過度な思考,感情,または行動で, 以下のうち少なくとも 1つによって顕在化す る。
⑴ 自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考。
⑵ 健康または症状についての持続する強い不安。
⑶ これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力。
基準 C:身体症状はどれひとつとして持続的に存在していないかもしれないが,症状のある状態は 持続している(典型的には 6 カ月以上)。
表 2 DSM-5 に基づくうつ病スクリーニング用 チェックリスト
基準 A:以下の 9つの症状のうち 5 つ(またはそれ 以上)が同じ 2 週間の間に存在する ⒜ 基本症状【⑴ ⑵のどちらか,あるいは両者 が存在することが必須】
⑴ 抑うつ気分(気分の落ち込み)
⑵ 興味または喜びの喪失(趣味の中断,新聞・書物・テレビを見なくなった,人に会うことを避けるなど)
⒝ 身体症状
⑶ 食欲不振とその結果としての体重減少
⑷ 不眠
⑸ 疲労:すぐに疲れてしまう,疲れがとれな い,いつも横になっていたいなど
⒞ 精神症状
⑹ 焦燥感(他者からも観察可能なレベル)
⑺ 過度な罪責感
⑻ 決断困難:思考が前に進まない
⑼ 希死念慮
基準 B:社会的な機能障害を引き起こしている;職業,学業,家事,自立的な日常生活などが継続困難となっている
判定:基準 A で 5 つ以上が該当し【少なくとも(1)(2) のどちらかは必須】,基準 B をも満たしている 場合は,うつ病を疑い精神科受診をすすめる。
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