白内障

[No.2329] 虹彩異色症とホルネル症候群の関連とは?

目に向かう交感神経が障害されると(注:ホルネル症候群)患側の虹彩が青みを増す虹彩異色症を生ずるとされますが、それにはアドレナリンを分泌する交感神経の働きに関与しているからであると考えられています。(すべての虹彩異色症がホルネル症候群だという訳ではありません。)そこで、メラニン色素の合成に関連する生化学的な動きをおさらいしてみます。

 メラニン色素の合成は、チロシンというアミノ酸を基に行われます。この過程はいくつかのステップから成り立ち、特定の酵素が各ステップを触媒します123

  1. チロシンの酸化:最初のステップは、チロシンがチロシナーゼという酵素によって酸化され、ドーパ(3,4-ジオキシフェニルアラニン)に変換されることです34

  2. ドーパの変換:ドーパはさらにチロシナーゼによって酸化され、ドーパキノンに変換されます1

  3. メラニンの生成:ドーパキノンは自動的に酸化を起こしてインドール化合物(インドール化合物とは、インドール骨格を含む化合物の総称を指します。インドール自体は、ベンゼン環とピロール環が縮合した構造を持つ有機化合物で、分子式はC8H7N、分子量は117.15)に変化し、それらが互いに結合することでユーメラニン(黒色のメラニン)が合成されます1。また、このときシステインが存在すると、ドーパキノンはシステインと結合して5-S-cysteinyl dopaに変化し、これが重合してフェオメラニン(黄色のメラニン)が合成されます1

このメラニン生成経路は、神経伝達物質であるドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのカテコールアミンを生成する経路と共通のステップを含んでいます5。具体的には、チロシンからドーパへの変換ステップは、これらのカテコールアミンの生成経路でも重要な役割を果たします34

以上がメラニン色素の合成経路についての基本的な説明です。

注:ホルネル症候群:

ホルネル症候群は、交感神経系の機能障害によって引き起こされる神経学的な症候群で、顔面や目の周りの症状を特徴としています1。主な症状と原因は以下の通りです:

症状

  1. 縮瞳:疾患や薬物、外傷によって瞳孔が反対側の瞳孔に比べて異常に縮小する現象2
  2. 眼瞼下垂:先天性理由、後天性理由(コンタクトレンズ過剰装用、加齢、加齢などに伴う眼筋萎縮など)によって上瞼の挙上機能に障害が起こり、瞼を開きづらくなること2
  3. 発汗低下:異常が生じた側の顔面は、汗の量が正常より少なくなったり、まったく汗をかかなくなったりすることがあります3

原因: ホルネル症候群の原因は、脳と眼をつないでいる神経線維が分断されることです3。この神経線維の中には遠回りの経路をたどるものがあり、そのような神経線維は、まず脳から脊髄の中を下っていきます。胸部で脊髄から出た後、首の頸動脈の周囲を囲んで頭部に戻り、頭蓋骨の内部を通過して眼に到達します3。神経線維がこの経路のどこかで分断されると、ホルネル症候群が起こります3

ホルネル症候群は自然に発生することもあれば、ほかの病気が原因で発生することもあります。例えば、以下に挙げるような頭、脳、首、胸部、脊髄の病気が原因で起こることがあります3

  • 肺がん(特に肺尖部に見られるパンコースト腫瘍が知られる)
  • その他の腫瘍
  • 首のリンパ節の腫れ(頸部リンパ節腫脹)
  • 大動脈解離または頸動脈の解離(動脈の内壁が裂けること)
  • 胸部大動脈瘤(大動脈の壁に膨らみができる病気)
  • けが

また、ホルネル症候群は出生時から存在する場合もあります(先天性ホルネル症候群)3

虹彩異色症の説明(初版)はこちら

虹彩異色症、heterochromia, odd eyeとは

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