白内障

[No.436] 後発白内障に対するヤグレーザー後嚢切開術とは

後発白内障に対するヤグレーザー後嚢切開術とは

ヤグで切る
ヤグレーザーを使った後発白内障の切開術が必要な場合があります。

その概容をお話してみましょう。この後嚢切開と言うのは白内障手術がうまく終わって1年程度してから、また視力がおちた場合に、それが後嚢の混濁によるものであるならば、水晶体の後嚢をレーザー光線で破って視力を回復させると言う手法です。(白内障手術が終わって、1か月で眼鏡処方が済むと、来院しなくなるケースがまれならずあります。)

白内障の進行
白内障と言うのは眼の中の生まれつき持って生まれたレンズが年を取ってにごった状態です。誰でも年を取れば水晶体には混濁が出てきます。カリーユニなどの点眼薬は進行を遅らせる効果を持つとされますが、矯正視力(最善の眼鏡で図った視力)が0,8から0,7程度に下がり、それが気になるなら白内障手術を勧めます。(自由が丘清澤眼科では行っていません)

水晶体核の超音波破砕吸引後発白内障の話に進む前に、まず普通に行われる白内障手術の説明から始めます。現在の標準的な白内障手術は超音波乳化吸引術です。点眼麻酔の後、まず水晶体の前面の膜を取り、この図のように超音波の出るチップで水晶体中央の核と呼ばれる芯の部分を削って行き、同時にその破砕液を吸引します。

皮質の吸引
次に水晶体皮質と呼ばれるやや柔らかくて、粘りの有る水晶体の周りの部分を吸い取ります。その際には残った袋、つまり水晶体嚢(カプセルともいいます)を破らない事が肝心です。次に人工水晶体をこの残された水晶体嚢の上に載せなくてはならないからです。

眼内レンズ眼内レンズは、合成樹脂で作られた小さなレンズで本体が折り曲げられる柔らかさを持っています。光学部(オプティクス)とそれを支持する足の部分(ハプティクス)から出来ていて、様々なメーカーが様々な特徴のあるレンズを製造販売しています。

人工レンズ
レンズには光学部と支持部が別の素材で作られた左端の図のような形のもの、単一の素材から光学部と支持部を一体として掘り出したもの、そしてその透明な素材にやや黄色未を帯びた色を着色して自然な色合いを演出したものなどが有ります。

後発白内障その手術がうまく行き、いったん矯正視力が1,0まで出た後、一年くらいたったらなんとなくまぶしいとか、あるいは少し視力が下がったと言う自覚症状が出て来る場合が有ります。そのとき、詳しく観察するとレンズの後ろ面の袋に水晶体のカプセルの細胞から分泌された混濁が溜まっているのが見られます。上は透明な後嚢を持つ眼の図、下は混濁を持った後嚢の有る眼の図です。

後発白内障
この図では、瞳孔を開き斜めから照明して後ろの組織を光らせて後嚢の濁りがよく見えるようにして写真を撮って有ります。これだけの濁りがあれば見難くなることは推測できるでしょう。

レーザー装置
この混濁を伴う後嚢は、このような形のヤグレーザー装置でレーザー光を当てて切開します。

レーザー危険表示レーザー光は強いエネルギーを持つので、うっかり室内の金属面にに反射した光を眼で見たりすると、その眼に怪我を負わせる恐れがあります。そこでこのような危険を知らせる標識が部屋の入り口などには設置されています。

ヤグで切る
この図はレーザー装置を使って医師が患者の後嚢を切開する処置を行っている場面の眼の断面図です。実際にはこの作業は暗室で行われます。左からコンタクトレンズで集光されたレーザー光が右のレンズ後嚢に当たって水蒸気爆発を起こしています。こうして後嚢が切開されるのです。通常レーザー光の照射は10-20発ですが、数発で済む事もしばしば有ります。

アブラハムレンズ
実際に光を入れるときにはこのようなコンタクトレンズを角膜に乗せて照射を行います。実際にかかる時間は散瞳、照射、観察と併せても30分程度、照射だけなら5分程度でしょう。

ヤグの実際
考えられる合併症としては、ピントが浅いとレンズに当たって、やがて消えて見えなくはなるのですがレンズに僅かですが傷がつきます。虹彩にヤグレーザーの光が当たるとやがて止まるのですが、前房に少なからぬ出血が出ます。更に誤って前方に焦点をあわせてしまうと角膜の内皮を傷める事も稀に有ります。切った後嚢は眼内に残るので飛蚊症(ひぶんしょう)を暫く訴えることも有ります。レーザーが炎症を引き起こせば眼圧の一過性上昇を見ることもあります。いずれにしても多くは時間と共に落ち着く程度の障害です。網膜に薄いところがあったり、硝子体(しょうしたい)による網膜の牽引があったりしますと、この処置は網膜剥離を惹起する事が有りますので、そのような症例ではこの処置をするならば慎重に行う必要が有り、場合によっては延期または断念する場合も有ります。(しかし、レーザー後嚢切開後に網膜剥離が起きたとしても、多くの場合にはそれは予測しがたいものでしょう。)

通常は翌日ないしは数日後に再診して眼圧や眼底に異常が無いことを確認してこの処置の成功を患者に伝えて、処置を終了とします。

この後発白内障の混濁は若い人の方が起き易く、高齢者には少ない傾向が有ります。30歳代などの若い患者さんでは必発と思ったほうが良いと思います。

カプスロトミー
ヤグレーザーで一瞬のパルス光を当てます。焦点が後嚢にあたりますと、その部分で極小さな水蒸気爆発を生じ、薄い後嚢の膜が切れるのが術者には目視できます。これを数回連続して行い、十分な広さの光路を作ってやると、いったん下がった視力はまた後嚢がにごる前の、白内障手術直後に示した程度の良い視力に戻ります。この図では中央にぎらぎらした曇りの突いた後嚢が無い部分が開いています。

この機材はは白内障手術を行っている診療機関には大概有りますが、非手術施設ではまず不要です。私は近隣の手術施行施設でこの処置をしてもらっています。(2021年11月から2022年3月まででこの依頼をしたのが2件のみでした。医科歯科大高瀬教授の論文が今週出ていました。)私にご相談くださればレーザーカプスロトミーの要否を考えて、必要なら紹介先を考えます。

非感染性ブドウ膜炎患者における後嚢混濁の長期発生率:論文紹介

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