九州大学の田中俊徳准教授は「観光客の急増が地域にもたらす混乱、オーバーツーリズムをどうコントロールするか」を月刊保団連9月号で論じています。同氏は書籍も発表し、更に現代ビジネスでも同氏は https://gendai.media/articles/-/130556 を記載しています。
これらの記事では、京都が直面している「オーバーツーリズム」の深刻な現状について詳しく解説しています。コロナ禍の収束と歴史的な円安により、外国人観光客が日本、特に京都に大量に押し寄せています。その結果、地元住民が市バスを利用できないという問題が発生しています。市バスは京都市民の重要な交通手段であり、慢性的な赤字を抱えて税金で補填している状況で、住民が乗れないのは大きな問題です。
実際に、足の悪い50代の男性は「バスが混雑していて座れない」、80代の女性は「観光客と住民を分けてバスを利用できないか」といった声を上げています。観光客が大型スーツケースを持ち込み、バスの入り口を塞ぐことで乗降が遅れ、渋滞の原因ともなっています。京都市は「手ぶら観光」を推進するポスターを掲示していますが、拘束力がなく効果は限定的です。
また、「京の台所」として知られる錦市場では、食べ歩きのマナー違反やポイ捨てが問題化しています。伝統的な干物や漬物よりも、観光客向けのアイスクリームやスイーツを販売する店が増え、「京都らしさ」が失われつつあります。東洋文化研究者のアレックス・カーはこれを「町の稚拙化」と呼び、市場原理が文化の多様性や美しさを壊していると指摘しています。
さらに、祇園の花見小路では、舞妓さんを執拗に追いかけて写真を撮ろうとする外国人観光客の迷惑行為が深刻です。かつては「一見さんお断り」の雰囲気があり、観光客が軽装で歩ける場所ではありませんでした。しかし現在では、Tシャツに短パンの観光客が我が物顔で写真を撮り、風情や格式が失われています。祇園では繁忙期に警備員を配置し、迷惑行為の禁止を呼びかけていますが、これ自体が伝統的な風情を損なっていると懸念されています。
田中氏は、京都が観光客に支えられている一方で、風情や情緒を理解しない観光客の殺到により、伝統や文化、格式が侵食されていると警鐘を鳴らしています。この状況は、ヨーロッパのヴェネツィアやバルセロナといった歴史的都市が観光客の「侵略」によって苦しむ状況と酷似しています。オーバーツーリズムがもたらす問題は、経済的利益だけでなく、地域の文化的アイデンティティや住民の生活を脅かす深刻な問題であり、早急な対策が求められています。
ーーー私の故郷の長野県では?:ーーーーー白馬村や軽井沢が多少の問題になっているかもしれません。長野県では、寄せられた投書に対して長野県観光スポーツ部長の加藤浩が次のように答えていました。ーーー
この度は、長野県の観光振興に向けて貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
長野県では、令和5年3月に策定した「しあわせ信州創造プラン3.0」における政策の柱として「快適でゆとりある社会生活を創造する」ことを掲げており、その実現に向けては、長野県に暮らす方も訪れる方も長野県を楽しんでいただける持続可能な観光地域づくりを推進していくことが必要だと考えております。
その取組の一つとして、ご質問いただいた、旅行者が集中する一部の地域や時間帯等において、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度低下への懸念が生じる、いわゆるオーバーツーリズムについては、暮らす方、訪れる方双方に影響を及ぼす重要な課題であるとともに、具体的な地域の実情に応じた対策が必要であると認識しております。こうした課題は、コロナ禍からの観光需要の回復や、外国人旅行者の一層の増加に伴い、今後も顕在化が懸念されることから、そのインフラ整備等に要するコストの一部を、外国人を含む旅行者の方々に広くご負担いただくことは、持続可能な観光地域づくりの実現に向けて重要な選択肢の一つだと考えております。
現在、県内では、上高地を中心とする北アルプス南部地域において、北アルプス登山道等維持連絡協議会により、持続可能な登山道維持を実現するため、利用者から協力金を募る実証実験(北アルプストレイルプログラム)が行われているところです。また、県においても、観光がもたらす弊害の防止、除去のほか県内の各地域にある強みや特長を大きく伸ばすため、観光振興財源の検討に取り組んでいるところですので、いただいたご意見も参考にしながら、オーバーツーリズムの抑制等への財源の活用も含め、検討を進めてまいります。ーーーーー
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