片眼性の一過性視力低下を反復する場合に、考慮すべき疾患を挙げてみます。
- 網膜片頭痛(Retinal Migraine)
- 特徴: 通常、片眼の視野欠損や視力低下が一時的に数分から1時間程度続きます。視力が完全に失われる場合もあります。
- 随伴症状: ミグレイン(片頭痛)で頭痛が伴うことが多いですが、頭痛を伴わない場合もあります。
- 診断:
- 症状の一過性であることが重要。視野欠損や求心性瞳孔異状などは残らないと考えます。
- 画像診断や採血で他の器質的疾患を除外する必要があります。
- 注意点: 長期的には網膜や視神経への血流障害の可能性があるため、血管リスクの評価も行います。
- 一過性黒内障(Amaurosis Fugax)
- 特徴: 片眼性の視力低下または視野欠損。数秒から数分間で回復。
- 原因:
- 頸動脈や心臓からの塞栓が網膜動脈を一時的に閉塞する。
- 頸動脈狭窄(MRA)や心房細動(心電図要)が関与する場合が多い。
- 診断:
- 頸動脈エコーや頭頸部MRI/MRA、心エコー検査。
- リスク因子(高血圧、糖尿病、高脂血症採血)の評価。
- 注意点: 脳梗塞の前兆である可能性があるため、迅速な評価が必要。
- 網膜中心動脈または網膜分枝動脈の一時的な閉塞
- 特徴: 短時間で視力が戻るが、数回なら繰り返す場合もある。
- 診断:
- 網膜血流の評価(蛍光眼底造影検査、OCTアンギオ撮影など)。
- 頸動脈や心臓の検査。
- 視神経炎や虚血性視神経症(NAION)
- 特徴:
- 視神経炎の場合は若年者に多く、視力低下が長時間持続する。
- 虚血性視神経症の場合は高齢者に多く、短期間では回復しないことが多い。
- 診断:
- 視神経乳頭の検査(眼底写真、OCT)。
- 血液検査(特に動脈炎性の疑いがある場合)。
- 網膜疾患
- 中心性漿液性脈絡網膜症(CSC):
- やや間をおいて繰り返す視力低下、特に暗い場所で顕著な場合あり。
- OCTで網膜下液の貯留を確認できる。
- 網膜裂孔や網膜剥離の初期症状:
- 短時間の光視症や視力低下を訴えることも考えられる。
- 必要に応じて眼底検査や広角眼底撮影を行う。
- 循環器疾患や血液疾患の関与
- 動脈硬化性疾患:
- 視力低下が繰り返す場合、動脈硬化の影響を考慮する。
- 血液凝固異常や自己免疫疾患:
- 抗リン脂質抗体症候群、巨細胞性動脈炎、ベーチェット病など網膜循環障害の下忍になる疾患を除外する必要がある場合もある。
- その他の可能性
- 機能性視力低下:
- 若年者で特に精神的ストレスが背景にある場合にこれを疑う。視野の再検で再現性があるか?
- 眼圧上昇(隅角閉塞):
- 急性隅角閉塞で一時的な視力低下が起こることがありますが、発作ならば痛みや充血なども伴うだろう。
- 清澤の追記:視神経鞘髄膜腫は:中高年女性で非常に緩徐な視野変化が起きる疾患です。典型的な一過性視力低下とは違いますが、網膜に変化が乏しく視野変化があるならば、これも可能性として考えておきたい疾患です(図はその例です)。
次のステップ
- 病歴と詳細な症状の聴取の完成: 症状の持続時間、頻度、誘発因子、随伴症状(頭痛や視覚異常など)。
- 基礎疾患の評価: 高血圧、糖尿病、動脈硬化症などの全身疾患のスクリーニング。
- 眼科的検査:
- 眼底検査、OCT、視野検査。
- 蛍光眼底造影検査やERG(必要に応じて)。
- 全身的検査: 血液検査(凝固異常、炎症マーカー)、心エコー、頸動脈エコー。
片眼性視力低下は時に重篤な疾患の前兆であるため、慎重な評価が必要です。
5,循環器内科へのコンサルテーションも検討。
コメント