緑内障患者におけるロービジョンケア~視野検査はGP(ゴールドマン視野計)とAP(自動視野計)のどちら?
井上眼科病院の鶴岡三恵子先生の演題を御茶の水ROCK conferenceで拝聴しました。この話題は臨床医として自分の患者の身体障害者手帳申請に当たっての重大な落とし穴に気づかせてくれる発表でした。
視覚障害に関連する身体障害の基準には視力と視野の2つの区分があります。そのうちの視野障害については、従来はゴールドマン動的量的視野計による判断基準だけがありました。比較的最近になって、ハンフリー視野計に搭載されたエスターマン視野でも視野障害の申請ができるようになりました。ところが、ゴールドマン視野計で各眼の視野を評価した結果を併せた等級と、ハンフリー視野計を用いて両眼開放状態で測定されるエスターマン視野測定で得られる等級では指定される障害等級が必ずしも一致しない場合があるという発表でした。
こうした現況を考えると申請時には、ゴールドマンとエスターマンの両者で視野測定を行い、より上位の等級を示す結果を示すデータで申請することが患者さんの利益という事になります。この障害等級は、障害者年金の金額にも直結しますから患者さんにとっては重要な問題です。さらに、病気の悪化で視野欠損が進行した場合には、等級変更の申請をしますが、その場合には前の申請時に使った検査法を使わなくてはならないといった運用上の制約もあるそうでした。こう聞きますと、身体障害者診断の指定医であれば、現在はハンフリー視野計しか所有しない医療機関でも視野障害による身体障害者指定の申請は可能ですが、両者の比較をした上での申請が可能な医療機関の手を煩わせるという方法を選ぶ方がよさそうです。
ーーーーーーーーー
清澤の調査に基づく追記:日本における視覚障害の認定基準は、2018年7月に改訂され、視野障害の評価方法としてゴールドマン型視野計と自動視野計(エスターマン両眼開放視野)が明確に規定されました。
ゴールドマン型視野計を用いる場合の認定基準:
- 周辺視野の評価:I/4視標を使用し、上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向の視野角度を測定します。各眼のこれらの視野角度の総和が80度以下であれば、視野が10度以内とみなされます。
- 中心視野の評価:I/2視標を使用し、同様に8方向の視野角度を測定します。両眼の中心視野角度は以下の式で算出されます:
両眼中心視野角度 = (3 × 大きい方の眼の中心視野角度 + 小さい方の眼の中心視野角度) ÷ 4
この値が一定の基準以下であれば、視野障害として認定されます。
自動視野計(エスターマン両眼開放視野)を用いる場合の認定基準:
- 周辺視野の評価:両眼開放エスターマンテストを実施し、120点中の視認点数を数えます。視認点数が70点以下であれば、視野障害として認定されます。
- 中心視野の評価:10-2プログラムを使用し、中心10度内を2度間隔で68点測定します。各点の感度が26dB以上である点を視認点とし、その数を数えます。両眼の中心視野視認点数は以下の式で算出されます:
両眼中心視野視認点数 = (3 × 多い方の眼の視認点数 + 少ない方の眼の視認点数) ÷ 4
この値が一定の基準以下であれば、視野障害として認定されます。
両者の結果の乖離について:
ゴールドマン型視野計と自動視野計の結果が一致しない場合があります。
例えば、中心視野が狭窄しているが周辺視野に残存がある場合、ゴールドマン型視野計では等級が重く判定されることがあります。
一方、垂直同名半盲などの症例では、自動視野計の方が重い等級と判定されることがあります。
このような乖離が生じた場合、個々の症例の生活上の不自由度を考慮し、より適切な方法を選択することが推奨されています。 J-STAGE
なお、視覚障害の認定基準の詳細については、日本眼科医会が提供する「視覚障害認定基準の手引き」を参照してください。 ジャコ
関連する当ブログの以前の記事です:
◎ 本日のメインテーマ谷原秀信先生の「ROCK阻害薬」については、本日は省略とします。まずこちらをご覧ください:
緑内障および高眼圧症に対するリパスジル-ブリモニジン配合点眼液(グラアルファ)の長期投与時の眼圧下降効果と安全性:論文紹介
コメント