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[No.3219] 先天眼振に関連する本人及び親への説明を考えてみました。

先天性眼振についての説明

1. 原因について

先天性眼振(Congenital Nystagmus)は、生後間もなく発症する眼振の一種で、視覚系や神経系の発達に関連しています。この状態では、両眼が規則的に自動的に動きますが、視力は比較的良好な場合も多いです。原因としては以下のものが考えられます:

  • 遺伝的要因: 家族内で眼振を持つ方がいる場合、遺伝的な関連が示唆されます。

  • 視覚系の異常: 網膜や視神経の発達不全、黄斑疾患、アルビニズムなどが関連することがあります。

  • 中枢神経系の異常: 小脳や前庭系の異常が原因となることもあります。

今回のケースでは、矯正視力が良好であり、正面視では眼振が少なく、側方視で水平方向の眼振が強いことから、特発性(原因不明)または軽度の視覚系の異常が疑われます。

2. 診断について

診断には、以下のステップを踏むことが重要です:

  • 詳細な病歴の確認: いつから眼振が見られるか、家族歴、視力の発達状況などを確認します。

  • 眼科検査: 視力検査、眼底検査(視神経乳頭陥凹拡大の評価を含む)、網膜OCTを実施します。現在のところ、視神経乳頭陥凹拡大以外に異常がないため、進行性の視神経疾患は否定的です。

  • 神経学的検査: 必要に応じてMRIやCTを用いて中枢神経系の異常を排除します

  • 電気生理学的検査: 網膜機能や視神経伝導路の評価のため、ERG(網膜電図)やVEP(視覚誘発電位)を行うことがあります。

3. 経過観察時の注意点

経過観察では以下の点を重視します:

  • 視力の安定性: 成長に伴い視力が維持されているか確認します。

  • 眼振の変化: 正面視と側方視での眼振の強さやパターンの変化を定期的に評価します。

  • 視神経乳頭の状態: 乳頭陥凹拡大が進行する場合は、緑内障の発症リスクを考慮し、眼圧測定やOCTで詳細に評価します。

  • 生活への影響: 学校生活やスポーツ活動において、眼振が日常生活にどのような影響を与えているか確認します。

4. 親および本人への説明

親御さんと本人には、以下の要点をわかりやすく説明します:

  1. 病態の概要: 眼振は目の動きを制御する神経系の一部が過敏になっているために起こります。この状態は先天性で、進行性ではないことが多いですが、視力には個人差があります。

  2. 視力への影響: 現時点では矯正視力が良好であり、日常生活に大きな支障はありません。ただし、細かい作業やスポーツで眼振の影響を感じることがあるかもしれません。

  3. 経過観察の重要性: 視力の維持や視神経の状態を継続的に確認するため、定期的な眼科検診が必要です。視神経乳頭陥凹の拡大が見られるため、将来的なリスク(例:緑内障)を防ぐためにも慎重にフォローします。

  4. 治療の必要性: 現時点では、治療の必要はありません。ただし、眼振が学業や生活に大きな影響を与える場合には、特定の治療法(プリズム眼鏡、手術、薬物療法など)を検討することができます。

  5. 日常生活の工夫: 眼振が強くなる側方視を避けて正面視を保つように心がけると、見やすくなることがあります。また、本人の姿勢や視線の工夫も役立ちます。

  6. 心理的支援: 本人が眼振について過度に心配しないようサポートすることが大切です。親御さんにも、過剰に心配せず見守る姿勢をお願いしています。

結論

現時点では、視神経乳頭陥凹以外に異常がなく、矯正視力も良好であるため、特定の治療を行う必要はありません。ただし、定期的な検診を通じて視力や眼振の変化を観察し、必要に応じたサポートを提供します。何か心配な点があれば、いつでもご相談ください。

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