白内障

[No.3244] 強化単焦点眼内レンズは標準治療となり得るか?:記事紹介

強化単焦点眼内レンズは標準治療となり得るか?

小松真理氏は、強化単焦点眼内レンズ (enhanced monofocal IOL) について議論しています。(日本の眼科9612025)p30-31

 

背景

小松真理氏は、強化単焦点眼内レンズ (enhanced monofocal IOL) について議論しています。1949年にSir Harold Ridleyが最初の眼内レンズ (IOL) の移植を行ってから、多くの種類のIOLが開発されてきました。しかし、これらのレンズの分類や機能に統一された基準がなく、選択が複雑であることが問題となっています。

新しい分類と評価

2024年にESCRS functional vision working groupは、IOLの命名法と分類を明確にする取り組みとして、enhanced monofocal IOLが治療の標準となり得るか?」という評価を行いました。国際標準化機構 (ISO) は、IOL4つのカテゴリーに分類し、その中にenhanced monofocal IOLが含まれます。これらのレンズは、従来の単焦点IOLよりも中間距離の視力が優れているとされていますが、真の焦点深度拡張型IOL (EDOF) には達していません

調査結果

調査によれば、enhanced monofocal IOLは遠方視力と中間距離視力の両方で優れた性能を発揮し、コントラスト感度や不快光視現象も同等であることが確認されました。これにより、患者は日常生活での視覚的困難が減少し、生活の質が向上すると期待されています。

臨床的優位性の確認

解析は、Oxford Center for Evidence-Based Medicine (OCEBM) の推奨に従って行われました。PubMedScopusWeb of Scienceを利用して、enhanced monofocal IOLと単焦点IOLを比較した複数の研究が検討されました。その結果、enhanced monofocal IOLは単焦点IOLよりも中間距離視力が有意に良好であり、遠方視力、近方視力、コントラスト感度、不快光視現象は同等であることが示されました

視機能の改善と日常生活への影響

強化単焦点IOLは、パソコンを見る、階段を上り下りする、買い物時の表示を確認するなどの中間距離の視力を確保することで、日常生活の制限を減らし、視機能のリハビリにおいても効果が期待されています。このレンズの導入により、患者の生活の質が向上し、全身的にも良い影響をもたらすことが期待されます。

結論

enhanced monofocal IOLは、その優れた性能と利便性から、将来的に白内障手術の標準治療となる可能性があります。しかし、標準治療として認められるためには、費用対効果の研究や眼科専門組織からの支持が必要です。さらなる科学的エビデンスを収集し、効果的な治療法として確立するための努力が求められています。

このように、enhanced monofocal IOLは白内障手術における新たな選択肢として注目されており、今後の研究と臨床応用に期待が寄せられています。

清澤の脚注:単焦点眼内レンズ(IOL)とは?

単焦点眼内レンズは、白内障手術で挿入される人工のレンズです。このレンズは基本的に一つの距離(通常は遠くの視力)に焦点を合わせるように設計されています。そのため、遠くのものはよく見えるようになりますが、近くのものを見るには老眼鏡が必要になることが多いです。

強化単焦点眼内レンズ(Enhanced Monofocal IOL)とは?

強化単焦点眼内レンズ(enhanced monofocal IOL)は、単焦点眼内レンズをベースに、少しだけ改良されたレンズです。このレンズは、基本的な単焦点機能を持ちながら、少しだけ焦点の幅が広がるように設計されています。これにより、遠くの視力はもちろん、少し近い距離(例えば、中間距離:パソコンの画面を見る距離)も見やすくなります。

主な違い

  • 焦点距離の範囲:
    • 単焦点IOL: 遠くのものに焦点を合わせる
    • 強化単焦点IOL: 遠くのものと中間距離のものに焦点を合わせる
  • 日常生活への影響:
    • 単焦点IOL: 遠くを見るときは眼鏡が不要だが、近くを見るときは老眼鏡が必要
    • 強化単焦点IOL: 遠くを見るときも、中間距離を見るときも眼鏡が不要になることが多い

このように、強化単焦点IOLは、単焦点IOLに比べて中間距離の視力もカバーできるため、日常生活での便利さが向上します。例えば、パソコンの作業や家事など、中間距離を見る機会が多い方にとっては、特にメリットが大きく、手術を行っていない眼科医もそれに関する知識を持つことは必要と思われます。現在の日本の医療システムでは、強化単焦点眼内レンズ(Enhanced Monofocal IOL)は保険適応として認められていません。これは、日本の保険適用基準において、この種の眼内レンズがまだ認められていないためです。

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