顔面神経麻痺の回復過程で起こる片側顔面痙攣とは?
顔面神経麻痺とは、顔の筋肉を動かす「顔面神経」が何らかの原因でダメージを受け、表情を作る動きができなくなる状態です。代表的なものに ベル麻痺 や ラムゼイ・ハント症候群(帯状疱疹ウイルスが原因) があります。
通常、時間とともに回復することが多いですが、神経が回復する際に異常な再生が起こることがあり、これが原因で「片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)」が発生することがあります。 本来ならば正常な形で回復するはずの神経が誤ったつながり方で異常に強い再生をしてしまい、意図しない顔の動きが起こるようになるのです。
片側顔面痙攣の症状
顔面神経の異常再生による片側顔面痙攣の症状には、以下のようなものがあります。
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まばたきをすると口角が引きつる
- 本来ならば まぶたを閉じるための神経 が誤って 口の筋肉を動かす神経 とつながってしまうことで、目を閉じるたびに口の端が引きつるようになります。
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口を動かすと目が勝手に閉じる
- 笑ったり、食事をしたりすると、意図しないまぶたの動きが起こることがあります。
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顔の片側がピクピクとけいれんする
- 特に 疲れているときやストレスがあるときに強く出る ことが多い。
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自分の意志とは関係なく顔の一部が動く
- 無意識のうちに、頬や口元がピクピク動くことがあり、これが 「病的共同運動」 と呼ばれるものです。
診断方法
片側顔面痙攣の診断には、以下のような方法が使われます。
1. 症状の問診と診察
医師は、患者の顔の動きをチェックし、意図しない筋肉の連動(病的共同運動) があるかどうかを確認します。
2. 神経学的検査
- 眼を閉じたときに口角が引きつるか
- 笑うと目が閉じるか
- 安静時にもピクピクとした動きがあるか などを確認します。
3. 画像検査(MRIなど)
- 脳腫瘍や血管の異常が原因ではないか を確認するため、MRIを撮影することがあります。
- ベル麻痺やラムゼイ・ハント症候群の回復過程で起こっているかどうかを調べるため にも用いられます。
治療方法
片側顔面痙攣の治療には、ボツリヌス毒素(ボトックス)注射、薬物療法、手術療法 などがあります。
1. ボツリヌス毒素(ボトックス)注射
- 目の周りのピクピク症状を止めるには最も一般的で安全な治療法。
- ボツリヌス毒素 を顔の痙攣が起こっている筋肉に注射すると、神経の働きを抑えて筋肉の異常な動きを軽減できる。
- 効果は 3〜4ヶ月ほど 続き、定期的に注射が必要。但し、通常の片側顔面神経麻痺に対する量でボトックスを使うと顔面神経麻痺が強く戻ることがあるから、投与するボトックス量は少なくする方が望ましい。
2. 薬物療法
- 軽症の場合やボトックスが使えない場合に、抗けいれん薬(カルバマゼピン、バクロフェンなど) を処方することがある。抑肝散加陳皮半夏なども鬱症状に対して処方され精神安定効果で有効な場合がある。
- しかし、効果には個人差があり、眠気などの副作用が出ることがある。
3. 手術療法(神経減圧術)
- 脳の血管が顔面神経を圧迫している場合だけ に適応がある。この異常神経再生では血管による圧迫はないから、神経減圧術は不要。
- 「微小血管減圧術(MVD)」 という手術を行い、圧迫している血管を動かすことで痙攣を改善する。
- 効果は高いが、頭蓋骨を開く手術なのでリスクもあるため、重症例に限られる。
4. リハビリテーション
- 顔のマッサージや表情筋トレーニング で症状を軽減する方法もある。
- 筋肉のバランスを整えることで、異常な動きを減らす効果が期待できる。
まとめ
顔面神経麻痺の回復過程での異常な神経再生が原因で、片側顔面痙攣が発生することがあります。 この症状は、まばたきをすると口角が動く、笑うと目が閉じる、顔がピクピクけいれんする などの形で現れます。
診断には問診や神経学的検査、MRI などが用いられ、治療には ボツリヌス毒素注射(ボトックス)、抗けいれん薬、手術療法 などがあります。
ボトックス治療が最も一般的で安全な方法ですが、重症例では手術が検討されることもあります。 また、リハビリや表情筋トレーニングを取り入れることで、症状の軽減を目指すことができます。
顔の痙攣が続く場合や、日常生活に支障がある場合は、早めに神経内科や眼科、脳神経外科などの専門医に相談することが大切です。
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