今回の日本の眼科(2月号日本眼科医会発行)では、大規模住民健診(コホート研究)からわかったこと、わかること(パート1)がテーマです。5つの研究が紹介されていますが、ご興味のある方は原文に戻って内容を詳しくご覧ください。
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日本における眼疾患の疫学研究とその展望
日本各地で実施された眼疾患に関する疫学研究は、緑内障や網膜疾患、加齢による眼の変化などを明らかにし、今後の医療や予防対策に貢献しています。
1. 多治見スタディ(岐阜県)
2000~2001年に岐阜県多治見市で実施された調査では、40歳以上の住民の緑内障有病率が5%、うち正常眼圧緑内障(NTG)は3.6%と最多でした。緑内障の危険因子は加齢・眼圧・近視であり、発見された緑内障の89.5%が未診断でした。特にNTGでは95.5%が未発見で、近視性黄斑症や白内障も視覚障害の主な原因とされました。
2. 久米島スタディ(沖縄県)
2005~2006年に沖縄県久米島町で行われた調査では、緑内障の有病率が7.0%と多治見よりも高く、NTG(3.3%)が最多でした。一方で、原発閉塞隅角緑内障の有病率が2.1%と、沖縄特有の傾向が見られました。
3. 久山町緑内障疫学調査(福岡県)
2017~2018年に福岡県久山町で行われた追跡調査では、緑内障有病率が7.6%に上昇し、高齢化が影響していると考えられました。また、糖尿病や腎機能低下が緑内障のリスク因子であることが示され、今後も追跡調査を継続し、病態解明を進める予定です。
4. 舟形町研究(山形県)
眼底写真を用いた網膜疾患の研究から始まり、網膜血管と全身疾患の関係や加齢による眼の変化を調査しています。特に倒乱視化や高次収差の増加、角膜疾患の有病率について報告されており、長期的な縦断研究が可能な点が本研究の特徴です。
5. 東北メディカル・メガバンク計画(東北地方)
2011年の東日本大震災後に設立された本プロジェクトでは、東北地方の住民約15万人のゲノムコホート研究が進められています。4万人に眼科的検査を実施し、近視の割合が79%と高いことが判明しました。また、学歴が高い人ほど眼軸長が長いことが示され、ゲノム解析では近視に関連する31の遺伝子座が特定されました。
まとめと今後の展望
これらの研究は、緑内障や近視、加齢黄斑変性といった眼疾患のリスク因子を明らかにし、予防や治療の基盤を築いています。今後は、遺伝要因と環境要因の相互作用を解析し、疾患のリスク予測や個別化医療の実現を目指します。
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