眼瞼痙攣を含むジストニアの治療では、ボトックスの注射やドライアイ管理などに注意が行きがちですが、今回は症状を悪化させる可能性のある生活習慣やリスク因子について調べてみました。眼瞼痙攣の症状を悪化させやすい生活習慣・環境因子には、1.ストレスや不安、2.睡眠不足、3.長時間のパソコン・スマートフォン使用。4.カフェインやアルコールの摂取過多。5,光刺激(まぶしさ)があります。リスク要因には、中高年、女性、遺伝素因、向精神薬、過去の眼手術が挙げられています。
【患者さん向け説明】
「眼瞼けいれんの症状を悪化させる生活習慣やリスクについて」
眼瞼けいれんは、まぶたの筋肉が自分の意志とは無関係にピクピクと動いたり、強く閉じてしまったりする神経の病気です。これは、脳の一部にある運動を調節する仕組み(基底核)がうまく働かなくなることが関係していると考えられています。
この病気の症状は、以下のような生活習慣や環境要因によっても悪化することがあります。
■ 症状を悪化させやすい生活習慣・環境因子
- ストレスや不安
- 精神的な緊張が高いときに症状が悪くなる方が多く、過労や人前での緊張も影響します。抑肝散加陳皮半夏などはその対応として考えています。
- 睡眠不足
- 睡眠が不十分なときやリズムが乱れたときに、けいれんが出やすくなる傾向があります。睡眠薬の使用は抑えつつ心地よい睡眠の確保にご留意ください。
- 長時間のパソコン・スマートフォン使用
- 眼精疲労やまばたきの減少が誘因となり、症状が増悪することがあります。以上に長いパソコンやスマホの使用等を減らす事にもご留意ください。
- カフェインやアルコールの摂取過多
- 個人差がありますが、これらの刺激物が症状を悪化させる例も報告されています。自覚のある方は、カフェインやアルコール摂取も多すぎぬ様にご留意ください。
- 光刺激(まぶしさ)
- 特に屋外の強い光や、フリッカー(ちらつき)のあるLED照明下では、けいれんが起こりやすい傾向があります。これに対しては遮光眼鏡の利用を指導しています。遮光眼鏡は眩しさを感ずる色光を選択的に抑制する物であって、脇からの入射光も抑える構造にしてあります。色を付けた状用眼鏡や、全色光を減らす市販のサングラスとは目的も構造も違うものです。
■ リスク要因として知られているもの
- 中高年(特に50歳以上)
- 女性にやや多い
- 遺伝素因(これが明らかな症例はごく一部です)
- 抗精神病薬やドーパミン遮断薬の使用歴(遅発性ジストニアと呼ばれる薬代性眼瞼痙攣に相当する物の誘因です。)
- 過去の眼手術や眼疾患(それがその素もの原因なのか、その前から軽くても眼瞼痙攣が有ったのか?は問われますが、手術を眼瞼痙攣の誘発因と感じて来院する患者さんは少なくありません。)
■ 生活上のアドバイス
- 十分な睡眠と休息を心がけましょう
- 強い光を避け、屋外では遮光眼鏡の使用を検討しましょう
- 目を休める時間(「まばたきタイム」)を1時間に1回は取るようにしましょう
- 適度な運動やリラクゼーションでストレスを軽減しましょう
- 症状が強い場合は医師に相談し、ボツリヌス治療などの選択肢についても考えましょう
【参考文献・根拠資料】
- Hallett M. (2011). Blepharospasm: recent advances. Neurology. 76(4 Suppl 2): S13–S17.
→ ストレス・睡眠不足・光刺激などが症状を悪化させる可能性を論じています。 - Defazio G et al. (2007). Environmental risk factors for primary adult-onset dystonia: a case–control study. Movement Disorders, 22(11), 1578–1583.
→ 睡眠不足、精神的ストレス、作業環境などのリスク因子を評価。 - Yokoyama M, et al. (2015). Sensory tricks and triggers in patients with blepharospasm. Journal of Neurology.
→ 患者報告による「悪化要因」としての光、ストレス、読書などを分析。
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