「飛蚊症」と「アステロイドハイアローシス」について
~中年以降に増える目の変化とその対処法~
50歳を過ぎて、「目の前に糸くずのようなものが飛んで見える」「黒い点や薄い影のようなものが浮いて見える」という症状に気づく方が増えてきます。これは「飛蚊症(ひぶんしょう)」と呼ばれ、多くは加齢に伴う目の中の自然な変化(後部硝子体剥離)によって起こります。
飛蚊症の主な原因のひとつが、目の中にある「硝子体(しょうしたい)」というゼリー状の物質の変化です。硝子体は、若いころは透明で均一ですが、年齢とともに水分が抜けて縮み、濁りが生じてきます。この濁りが光を乱反射させて、目の前にゴミや糸くずが浮いているように見えるのです。
その中でも、眼底検査で硝子体の中に細かい白い粒がびっしりと見えることがあり、これを「アステロイドハイアローシス(星状硝子体混濁)」と呼びます。まるで空にちりばめられた星のように見えることから、こう名付けられています。
アステロイドハイアローシスとは?
アステロイドハイアローシスは、カルシウムと脂質を含んだ小さな粒が硝子体の中に沈着する状態で、両眼性になることは少なく、片眼性が多いのが特徴です。この状態は、糖尿病や高脂血症などの代謝異常と関係することもありますが、ご質問のケースでは糖尿病などの背景は見られず、年齢による変化と考えるのが一般的です。
加齢以外に知られている原因としては、高脂血症、腎疾患、またまれに副甲状腺機能異常などの全身性の代謝異常が報告されています。ただし、はっきりとした原因が特定されることは少なく、多くは偶然に見つかります。
治療は必要?
アステロイドハイアローシス自体は、視力を著しく低下させることはあまりありません。むしろ、眼底が見えにくくなるため、眼科医が網膜や視神経を観察しにくくなるという意味で診察に影響が出ることがあります。
通常、飛蚊症のような症状があっても、視力や眼底に異常がなく、生活に支障がなければ治療は必要ありません。しかし、以下の場合は注意が必要です:
- 飛蚊症が急に増えた
- 光がピカピカと見える(光視症)
- 視野の一部が欠けて見える、黒いカーテンのようなものが見える
これらは、網膜剥離などの重篤な病気の前兆である可能性があるため、すぐに眼科で診察を受ける必要があります。
手術の適応について
どうしても濁りが強く、視力が低下したり日常生活に支障が出るような場合には、「硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつ)」という選択肢もあります。これは目の中の濁った硝子体を取り除く手術で、近年では安全性も高くなってきています。
ただし、アステロイドハイアローシスによる飛蚊症だけを理由に手術を行うことはまれで、多くは経過観察とします。気になる場合は、定期的に眼科を受診して、網膜の状態などをチェックしてもらいましょう。
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