緑内障

[No.3681]

緑内障とグリア細胞──神経の支え役から主役へ

原発開放隅角緑内障のすべてにグリア細胞の不調が関係しているとは限りません。しかし、網膜のグリア細胞と視神経障害との関連を指摘する研究が増えています。昨日(2025626日)の日刊ゲンダイに、神経系全般におけるグリア細胞の役割とその異常による疾患の発症に関する記事が掲載され、眼科医の立場からも見過ごせない内容が含まれていました。⇒エネルギーを作る「ミトコンドリア」を維持するには何をすればいいのか|日刊ゲンダイDIGITAL

これまで、神経細胞(ニューロン)が脳の主役で、グリア細胞は脇役とされてきました。しかし近年の研究では、グリア細胞はニューロンの活動を支えるだけでなく、情報伝達や記憶、感情の調整に関わる「真の共演者」であり、時には「神経活動を制御する支配者」であることが分かってきました。

代表的なグリア細胞にはアストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどがあり、それぞれが神経の代謝、老廃物の排除、血液脳関門の維持、免疫的防御など多くの重要な働きを担っています。これらの機能が破綻すると、アルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症、統合失調症、うつ病などの神経・精神疾患の発症と進行に深く関与します。

そして眼科領域、とくに緑内障におけるグリア細胞の関与についても重要な知見が得られつつあります。

視神経乳頭部に多く存在するアストロサイトは、視神経の通り道を構造的に支えていますが、緑内障ではこの細胞が炎症性物質を放出し、視神経の周囲に浮腫や線維化を引き起こすことがあります。また網膜内に広く分布するミュラー細胞(グリアの一種)も、緑内障に伴って活性化し、過剰なグルタミン酸などの神経伝達物質やサイトカインを放出。これが網膜神経節細胞(RGC)に対する毒性となり、視覚情報を脳へ伝える神経路が破壊されてしまうのです。

このようなメカニズムは、特に眼圧が正常であるにもかかわらず視神経が障害される「正常眼圧緑内障」の発症に関わっている可能性があります。眼圧の上昇だけでは説明できない緑内障病態に、グリア細胞の「過剰な働き」や「炎症反応」が関与しているという仮説は、今後の研究と治療開発において非常に重要な観点となるでしょう。

グリア細胞の役割に着目することは、緑内障だけでなく、加齢黄斑変性症や視神経炎、網膜変性疾患の新しい理解にもつながる可能性があります。神経眼科の分野では、これまで以上に「脇役」だったグリア細胞を主役に据えた視点が求められているのです。

緑内障とグリア細胞──神経の支え役から主役へ

原発開放隅角緑内障のすべてにグリア細胞の不調が関係しているとは限りません。しかし、網膜のグリア細胞と視神経障害との関連を指摘する研究が増えています。昨日(2025626日)の日刊ゲンダイに、神経系全般におけるグリア細胞の役割とその異常による疾患の発症に関する記事が掲載され、眼科医の立場からも見過ごせない内容が含まれていました。

これまで、神経細胞(ニューロン)が脳の主役で、グリア細胞は脇役とされてきました。しかし近年の研究では、グリア細胞はニューロンの活動を支えるだけでなく、情報伝達や記憶、感情の調整に関わる「真の共演者」であり、時には「神経活動を制御する支配者」であることが分かってきました。

代表的なグリア細胞にはアストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどがあり、それぞれが神経の代謝、老廃物の排除、血液脳関門の維持、免疫的防御など多くの重要な働きを担っています。これらの機能が破綻すると、アルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症、統合失調症、うつ病などの神経・精神疾患の発症と進行に深く関与します。

そして眼科領域、とくに緑内障におけるグリア細胞の関与についても重要な知見が得られつつあります。

視神経乳頭部に多く存在するアストロサイトは、視神経の通り道を構造的に支えていますが、緑内障ではこの細胞が炎症性物質を放出し、視神経の周囲に浮腫や線維化を引き起こすことがあります。また網膜内に広く分布するミュラー細胞(グリアの一種)も、緑内障に伴って活性化し、過剰なグルタミン酸などの神経伝達物質やサイトカインを放出。これが網膜神経節細胞(RGC)に対する毒性となり、視覚情報を脳へ伝える神経路が破壊されてしまうのです。

このようなメカニズムは、特に眼圧が正常であるにもかかわらず視神経が障害される「正常眼圧緑内障」の発症に関わっている可能性があります。眼圧の上昇だけでは説明できない緑内障病態に、グリア細胞の「過剰な働き」や「炎症反応」が関与しているという仮説は、今後の研究と治療開発において非常に重要な観点となるでしょう。

グリア細胞の役割に着目することは、緑内障だけでなく、加齢黄斑変性症や視神経炎、網膜変性疾患の新しい理解にもつながる可能性があります。神経眼科の分野では、これまで以上に「脇役」だったグリア細胞を主役に据えた視点が求められているのです。

清澤追記と注:ミューラー細胞の炎症に関する説明の部分で私は、重要な興奮性神経伝達物質であり神経毒性も重要視されるグルタミン酸に関する作用が重要ではなかろうかと考えます。ミューラー細胞には組織からグルタミン酸を取り除く働きがあり、その働きが弱まると組織でのグルタミン酸濃度が増し、神経毒性が現れます。

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