初めてのコンタクトレンズ処方で、緑内障の見逃しを防ぐために
当院では、初めてコンタクトレンズの処方を希望される方に対して、いくつかの基本的な検査を行っています。単に視力を測ってコンタクトレンズの度数を決めるだけではなく、安全に使用していただくために、眼の健康状態を詳しく確認することが大切だからです。
具体的には、以下のような検査を行います:
- 裸眼視力(メガネやコンタクトなしでの見え方)
- 屈折度数(近視・遠視・乱視などの度合い)
- 矯正視力(コンタクトやメガネで矯正した場合の見え方)
- 眼圧測定(目の中の圧力をチェック)
- 眼底検査(視神経や網膜の状態を観察)
この中でも特に重要なのが、「眼圧と視神経のチェック」です。なぜなら、初期の緑内障が見逃されやすいからです。
正常眼圧でも油断できない「正常眼圧緑内障」
「緑内障」という病気をご存じですか?これは視神経が少しずつダメージを受け、徐々に視野が狭くなっていく病気です。進行しても痛みがないため、気づかないうちに視力が大きく損なわれることがあります。
多くの方が「眼圧が高いと緑内障になる」と思われていますが、実際には**眼圧が正常範囲でも緑内障になるケース(正常眼圧緑内障)**が約6割を占めるとされ、日本人に多いタイプです。
視神経のくぼみ(陥凹)と神経線維層の薄さが手がかり
眼底検査では、視神経の中心部にある「くぼみ(陥凹)」を観察します。正常な人でもある程度のくぼみはありますが、それが深く大きくなっている場合には注意が必要です。これは、視神経の一部が失われている兆候かもしれません。
さらに、**OCT(光干渉断層計)**という最新の画像検査機器を使うことで、網膜の神経線維層(RNFL)の厚みを計測することができます。この神経線維層が薄くなっている場合も、緑内障の疑いが高くなります。
こうした兆候がある場合、たとえ視力に問題がなくても、**追加で「視野検査」**を行います。これは、見えている範囲に抜けや欠けがないかを調べる検査で、緑内障の診断において非常に重要です。
コンタクトレンズ希望の若年者でも油断できない
緑内障は中高年に多い病気ではありますが、若い方でも見逃されているケースがあります。特に強度近視の方では、視神経がもともと細長く変形しているため、緑内障の兆候が分かりづらいこともあります。そのため、コンタクトレンズ処方を希望される若年の患者さんであっても、一度はしっかりとした眼底検査と神経線維層評価を受けていただくことをお勧めしています。
最後に:定期的な目の健康チェックを
コンタクトレンズは便利な道具ですが、「見えればいい」だけでなく、「目が健康である」ことが大前提です。当院では、コンタクトレンズ処方の機会を、患者さんの眼の健康を確認する大切なチャンスととらえています。
見逃されやすい緑内障を初期の段階で見つけるためにも、ぜひ定期的な眼科受診をおすすめいたします。気になる症状がなくても、目の健康診断はとても大切です。
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