眼瞼ミオキミア(がんけんミオキミア)とは?
~まぶたのピクピク、気になりませんか?~
「まぶたがピクピクと動いて気になる」「疲れているときによく起こる」――そんな症状を感じたことはありませんか?
これは眼瞼ミオキミア(lid myokymia)という、ごく一般的に見られるまぶたの不随意運動(自分の意思とは無関係なけいれん)の一種です。
◆どんな症状?
眼瞼ミオキミアは、多くの場合片眼の下まぶたの外側寄りに起こる、細かく規則的なまぶたの痙攣(けいれん)です。自覚される「ピクピク」は、数秒から数分続くことが多く、短時間で治まるケースもあれば、数日〜数週間にわたって断続的に現れることもあります。
基本的に痛みや視力低下は伴いませんが、不快感や見た目の問題から、患者さんのQOL(生活の質)に影響を与えることもあります。
◆原因は?
眼瞼ミオキミアは疲労、ストレス、睡眠不足、カフェインの過剰摂取など、日常生活の影響が大きいと考えられています。特にパソコンやスマートフォンの長時間使用による眼精疲労も一因とされます。
また、まれに脳幹部の病変や神経疾患で似たような症状が出ることもありますが、それらの場合は通常、左右両側性であったり、持続性であったり、他の神経症状を伴う事が多いです。典型的な眼瞼ミオキミアではそのような所見はなく、良性かつ一過性のことがほとんどです。
◆診断は?
眼科では、視診によって動きを確認し、必要に応じて他の神経疾患(例:片側顔面けいれん、良性原発性眼瞼痙攣、多発性硬化症など)との鑑別を行います。
眼瞼ミオキミアは診断的検査(MRIや血液検査など)が必要となることは稀で、多くは問診と視診だけで診断されます。
◆治療は?
多くの場合、治療を必要とせず自然に軽快します。
治療が必要な場合は、まず以下の保存的対処法が勧められます:
- 睡眠を十分にとる
- ストレスを避ける
- カフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンク等)を控える
- パソコン作業や読書など目を酷使しすぎない
- アイマスクや温罨法で目の周囲を休める
上記で改善が得られることがほとんどです。
◆改善しない場合の選択肢 ― ボトックス治療
まれに、数週間〜数か月たっても症状が消えず、日常生活に支障を来すようなケースでは、「片側顔面けいれん」のごく軽症型とみなして、ボツリヌストキシン(ボトックス)治療を一度だけ試みることがあります。
ただし、これは例外的な対応であり、通常は行いません。ボトックス治療は筋肉の動きを一時的に弱めて痙攣を止める働きがありますが、効果は一時的(約3〜4か月)であり、繰り返し治療を要するケースは片側顔面けいれんであることが主体です。
このような判断は眼科医や神経眼科の専門医と相談しながら行うべきです。
まとめ
眼瞼ミオキミアは、疲れやストレス、カフェインなどの影響で生じる軽度なまぶたのけいれんで、通常は治療を要さず自然に回復します。ただし、ごく一部の例では、症状が長引いたり生活に支障をきたすことがあり、その際には例外的にボトックス治療を考慮することも可能です。
まぶたのけいれんが数週間続く場合や、顔全体に波及するような場合には、他の神経疾患の可能性もあるため、眼科での診察を受けることをお勧めします。
参考文献・情報源
- Koller WC, Rubin AJ. “Benign essential blepharospasm and hemifacial spasm.” Semin Neurol. 1986;6(2):115-123.
- Jankovic J. “Botulinum toxin in clinical practice.” J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2004;75(7):951–957.
- American Academy of Ophthalmology – EyeWiki: Lid Myokymia
- 日本神経眼科学会「眼瞼痙攣・片側顔面痙攣診療ガイドライン」2022年改訂版
- MSDマニュアル家庭版「まぶたのけいれん(ミオキミア)」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/eye-disorders/symptoms-of-eye-disorders/eyelid-twitches
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