出口治明『哲学と宗教全史』を読む
――人類が「なぜ生きるのか」を問う全史的試み
清澤のコメント:「性善説は上級の人々を対象とし、性悪説は下級の人々を対象としたものなので矛盾するものではない」など、この書の内容を評論した記事を見ました。そこでこの本の概要を調べ、この本を通読してみたいと思いました。哲学・宗教・倫理を一冊で概観できる“知の地図帳”。読みやすさを優先した語り口は入門書として秀逸だそうです。468頁で定価:3,190円(税込)だそうです。
第1章 人間の誕生と信仰の始まり
キーワード:アニミズム、神話、倫理の萌芽
本書は、宗教と哲学を「対立軸」ではなく「連続する人間の思考史」として描く。最初の章では、自然への畏怖から神話が生まれ、信仰が共同体の秩序を支える仕組みを形成していく様子を明快に語る。レビューでは「人間が“考える動物”であることを最もよく感じさせる章」と評されている。
第2章 古代ギリシャと哲学の誕生
キーワード:理性、ロゴス、ソクラテス以前の哲学者
宗教から哲学への転換を「自然現象を神話でなく理性で説明しようとする試み」として位置づけ、タレス、ピタゴラス、ソクラテスらの思想を簡潔に整理。専門書にありがちな難解さを避け、時代の流れの中で思想家たちの「問い」を並べるスタイルが読みやすいと高く評価される。
第3章 東洋の思想と倫理の体系化
キーワード:儒教、仏教、インド思想、道教
東西思想を対比的に扱うのが本書の特色。孔子や釈迦を「個人の内面に倫理と救済を求めた革命家」と位置づけ、東洋思想が社会秩序や精神文化に与えた影響を俯瞰する。多くの書評が「宗教史の一断面としてではなく、思想の系譜として整理されている」と評している。
第4章 キリスト教とイスラームの思想
キーワード:一神教、信仰と理性、スコラ哲学
アウグスティヌスやトマス・アクィナスを通じ、信仰と理性の緊張関係を解きほぐす。イスラーム哲学やユダヤ思想にも言及し、宗教が知を独占する時代を描く一方、「宗教は理性の敵ではなく、共に人間の救済を探る道」との著者の姿勢が読み取れる。読者からは「宗教を敵視せず、理解しようとするバランスが好ましい」との声が多い。
第5章 近代の覚醒と人間中心主義
キーワード:ルネサンス、啓蒙、科学革命、自由
デカルトからカントへと続く合理主義の流れを、「宗教から人間への関心の転換」として描く。レビューでは「出口氏の文体が最も生きる章」と評され、「思想史が単なる暗記でなく、“生き方の選択肢”として見えてくる」との感想もある。
第6章 現代思想と宗教の再解釈
キーワード:マルクス、ニーチェ、フロイト、ポストモダン
宗教の退潮と新しい倫理の模索を扱い、著者は「人間はなお、意味を求めて問い続ける存在だ」と結ぶ。全体を通じ、思想家100人を登場させながらも一貫した流れが保たれており、「森を見せる本」としての完成度が高い。
書評の総括
本書は、哲学・宗教・倫理を一冊で概観できる“知の地図帳”。読みやすさを優先した語り口は入門書として秀逸で、歴史・宗教・倫理に初めて触れる読者にも向く。ただし、専門的な分析や原典の深読みを求める層には物足りなさも残る。
多くの書評が一致して挙げる本書の魅力は、「哲学を人生論に、宗教を共生の知恵に置き換える」著者の姿勢にある。出口治明は企業経営者でもあり、宗教と哲学を“現代を生き抜く教養”として語ることで、読書体験を日常に引き寄せる。
総じて、「世界史の流れの中で人間の思考を俯瞰したい人」には必読の一冊である。
書籍基本情報
-
書名:『哲学と宗教全史』
-
著者:出口治明
-
出版社:ダイヤモンド社
-
発行年月:2019年8月(第1刷)
-
ページ数:468頁
-
定価:本体2,900円+税(3,190円・税込)
-
ISBN:978-4-478-10187-2



コメント